論文
第69巻第3号 2022年3月 高齢者のエイジング・イン・プレイス(地域居住)に
湯川 順子(ユカワ ジュンコ) |
目的 エイジング・イン・プレイス(地域居住)とは,高齢者が住み慣れた地域で最期まで暮らし続けることである。本研究の目的は,インフォーマル・ケアに着目し,当事者である高齢者がエイジング・イン・プレイスに影響を与える要因についてどのように捉えているのかを明らかにすることである。
方法 先行研究を踏まえ,①生活支援・介護,②生活環境(客観的要因),③地域への思い(主観的要因)の大きく3つがエイジング・イン・プレイス(地域居住)に影響を与えていると仮定し,地域で居住する65歳以上の高齢者を対象とした自記式質問紙調査の結果から,地域居住意向を従属変数とした重回帰分析を行った。さらに分析を深めるために主成分分析を用いた。
結果 重回帰分析の結果,エイジング・イン・プレイスに①生活支援・介護の「頼れる程度(近隣・友人)」「家(家族による介護)」,③地域への思い(主観的要因)の「地域住民の利他性」「地域への愛着」「住みやすさ」が有意に関連していた。②生活環境(客観的要因)は,有意ではなかった。また,有意度が最も高かった「住みやすさ」の主成分を投入した重回帰分析を行ったところ,「地域への愛着」「家(家族による介護)」「頼れる程度(近隣・友人)」〈交通利便性のよい地域に居住〉が有意であった。
結論 エイジング・イン・プレイスには,住みやすさや地域への愛着という主観的要因が影響し,主観的要因には,社会的および物理的な生活環境が関係していた。また,近隣や友人に頼れる程度と家族に介護してもらいたいというインフォーマル・ケアが,エイジング・イン・プレイスに影響することがわかった。高齢者は自宅を「住み慣れた場所」と捉え,自宅での生活の継続を望んでいる。ただし,高齢者が自宅で家族による介護を望む背景については,さらなる分析が必要である。
キーワード 高齢者,エイジング・イン・プレイス,地域居住,地域包括ケア,インフォーマル・ケア