論文
第69巻第3号 2022年3月 第1号被保険者の介護保険料基準額(月額)が
久保寺 重行(クボデラ シゲユキ) |
目的 第6期のすべての保険者の第1号被保険者の介護保険料基準額(月額)を用いて地域間格差が生じる要因について明らかにすることを目的とした。
方法 「(第6期)保険者別保険料一覧」を用いてすべての保険者の第1号被保険者の介護保険料基準額を被説明変数とし,厚生労働省の「平成27年度介護保険事業状況報告(年報)」および「平成27年介護サービス施設・事業所調査」のデータを用いて,所得段階1の割合,後期高齢者割合などを説明変数として重回帰分析を行った。
結果 所得段階1の割合,施設定員率(特養),施設定員率(老健),居宅・施設・地域密着型利用率,要介護認定率は正に有意となっており,第1号被保険者の介護保険料基準額(月額)を高める要因となっていた。一方,後期高齢者割合は負に有意となっており,第1号被保険者介護保険料基準額(月額)を低くする要因となっていた。また,施設定員率(療養)および2割負担割合は特に関連性はなかった。
結論 分析結果からは,①特別養護老人ホームと介護老人保健施設の定員増加は,第1号被保険者の介護保険料基準額(月額)の増加につながるということ,②非課税などの低所得者の割合が高い保険者ほど第1号被保険者の介護保険料基準額(月額)が高くなっていることから,介護保険料の算出において,所得段階別加入割合補正係数が機能していない可能性があることの2点が示唆された。
キーワード 第1号被保険者の介護保険料基準額(月額),地域間格差,所得段階1の割合,施設定員率,所得段階別加入割合補正係数