論文
第69巻第4号 2022年4月 介護予防事業の包括的評価指標としての年齢調整WDP-要介護認定者数を用いた「質」を含む高齢者健康指標による評価および可視化-栗盛 須雅子(クリモリ スガコ) 福田 吉治(フクダ ヨシハル) 星 旦二(ホシ タンジ)石井 麻美(イシイ アサミ) 松本 敦子(マツモト アツコ) 小澤 多賀子(コザワ タカコ) 黒江 悦子(クロエ エツコ) 矢野 敦大(ヤノ アツヒロ) 大田 仁史(オオタ ヒトシ) |
目的 要介護認定者数を用いて算出する「質」を加味した指標である加重障害保有割合(以下,WDP)を介護予防事業の包括的評価指標として活用することを推進するため,高齢者の健康度の推移を可視化し,提示することを目的とした。
方法 要介護認定者数,人口データ,効用値を用いて,全国の2010~2019年の10年間の年齢調整WDPを算出し,その年次推移を示し,同様に茨城県の2006~2019年の14年間の年齢調整WDPを算出し,その年次推移を示した。また,全国,茨城県ともに,最初の年と中間,中間と最後の年,最初と最後の年の平均の差を対応のあるt検定を用いて年比較を行った。さらに,地理情報分析支援システムMANDARAを用いて,全国と茨城県の年齢調整WDPの地域分布図を作成し,年齢調整WDPの2015~2019年の5年間の変遷と地域間比較を行った。
結果 年齢調整WDPの年次推移は,全国の男性は2015年47.53(±3.98)から2019年44.34(±4.08)まで減少し,女性も2015年56.59(±5.17)から2019年52.23(±4.88)まで減少した。茨城県の男性は,2006年39.14(±4.31)から2008年39.98(±4.51)まで増加し,2013年40.23(±3.88)から2019年37.42(±4.17)まで減少傾向にあった。女性は,2006年47.66(±5.20)から2013年の49.55(±3.76)まで増加傾向にあり,2014年49.45(±3.65)から2019年46.83(±4.19)は減少した。対応のあるt検定の結果,全国の男性は2010年と2019年は有意に減少した(p<0.001,p<0.001),女性は2010年と2014年は有意差は認められず,2014年と2019年,2010年と2019年は有意に減少した(p<0.001,p<0.001)。茨城県の男性は2013年と2019年,2006年と2019年は有意に減少し(p<0.001,p=0.043),女性は,2006年と2019年は有意差が認められなかった。全国の地域間比較を8地方区分で比較すると,男性は,2015年は,北海道,東北,近畿,中国,四国が高い傾向にあり,2019年は2015年と比較すると低下している傾向にあった。女性は年の経過とともに,低下する傾向があった。茨城県は5地域で比較すると,男性は,2015年は県南と鹿行が高い傾向にあり,女性は,2018年,2019年には県北,県央,県南,鹿行の一部は高いものの,2015年と2019年を比較すると2019年は低下している傾向にあった。
結論 「質」を加味した高齢者健康指標である年齢調整WDPの推移を可視化し,地域における介護予防事業の包括的評価指標としての有用性を提示した。可視化することで,政策,施策の策定の根拠として,国民,地域住民の理解が得られやすく,介護予防の自助,共助を促す一助となる。
キーワード 年齢調整WDP,包括的評価指標,要介護認定者数,高齢者健康指標,可視化