メニュー

論文記事:就労者における抑うつ状態の関連要因 202204-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

m header btn

一般財団法人 厚生労働統計協会

サイトポリシープライバシーポリシー

pmark     お問い合わせ

論文

論文

第69巻第4号 2022年4月

就労者における抑うつ状態の関連要因

-若年層および中高年層の比較-
岩田 由香(イワタ ユカ) 有本 梓(アリモト アズサ) 田髙 悦子(タダカ エツコ)

目的 就労者における抑うつは,就労者個人はもとより社会全体における喫緊の課題であるが,その影響および方策は若年層および中高年層では異なる可能性がある。しかしながら若年層および中高年層の層別にまた同時に検討したものはまだ十分とは言えない。就労者の抑うつに対する公衆衛生による介入をより適切にするためには,対象に応じた方策を検討する必要がある。そこで本研究では,若年層および中高年層の層別に抑うつ状態とその関連要因を明らかにすることを目的とした。

方法 対象は,首都圏A大規模製造事業場に勤務する20~59歳の従業員543名(全数)であり,無記名自記式質問紙調査(留め置き法)を実施した。調査時期は,2016年9~11月である。抑うつ状態はK6を用いて評価し,関連要因として,基本属性,BMI,主観的健康感,生活習慣(Breslow),ヘルスリテラシー(伝達的・批判的ヘルスリテラシー)等を把握した。分析は,20~39歳の若年層と40~59歳の中高年層別に抑うつ群および非抑うつ群における関連要因の群間比較をCochran-Mantel-Haenszel検定および一元配置分散分析にて検討した。

結果 回答者数は417名(回答率76.8%)であり,K6,生活習慣,ヘルスリテラシーの項目に欠損のない有効回答者数387名(有効回答率71.3%)を分析対象とした。対象者の平均年齢は38.0±10.6歳,男性87.1%であった。抑うつ群は,全体では32.3%,若年層では33.9%,中高年層では30.2%であった。抑うつ状態の関連要因は,全体では,BMI,主観的健康感,Breslowの健康習慣得点,睡眠,軽度の身体活動,ヘルスリテラシー得点であり,若年層では,BMI,主観的健康感,間食習慣,睡眠,ヘルスリテラシー得点,中高年層では,主観的健康感,喫煙習慣,睡眠,軽度の身体活動であった。

結論 就労者の抑うつ状態の関連要因は若年層および中高年層の年齢階級別に異なることが明らかとなった。抑うつ状態の影響の緩和および予防の方策に向けては,就労者の年齢階級別の特性を考慮し,若年層ではヘルスリテラシーを勘案した組織レベルでの健康増進の取り組みや,中高年層では主観的健康感を勘案した個人・組織レベルでの生活習慣の変容に向けた取り組みなどの重要性が示唆された。

キーワード 抑うつ状態,就労者,若年,中高年,生活習慣,ヘルスリテラシー

 

論文