論文
第69巻第5号 2022年5月 都道府県別にみる
福井 敬祐(フクイ ケイスケ) 伊藤 ゆり(イトウ ユリ) 片野田 耕太(カタノダ コウ) |
目的 がん死亡の経時変化のモニタリングはがん対策の計画の策定・評価の各場面において,重要な役割を担う。一方で,経時変化のモニタリングには複雑な数理モデリングやデータ解析が必要となるため,各自治体でがん対策の策定・評価を行う実務者が実行するのは容易ではない。本研究では,公的統計を用いて,各自治体の担当者が利用可能なツールの作成とその概要について紹介することを目的とした。
方法 都道府県別の人口動態統計および国勢調査から取得した,1995~2018年のがん死亡データおよび人口データと国立社会保障・人口問題研究所提供の予測人口データから作成した2019〜2030年の各都道府県予測人口を用いた。これらのデータを基に,Nordpred解析を実行するツールをR言語により作成しWeb上に提供した。
結果 本研究で作成したツールでは様々な設定に基づいて,2030年までの各都道府県のがん死亡率の推移と予測値を算出することが可能である。作成したツールを用いることで専門性の高い解析作業なしに,柔軟ながん死亡率の分析が可能となり,迅速ながん対策の策定・評価への活用が期待される。作成したツールはNordpredによるがん死亡率経時変動予測(https://fukui-ke-0507.shinyapps.io/JCanMorTrend/)より利用可能である。
結論 医療・保健政策現場におけるEvidence Based Policy Making,Evidence Based Medicineを促進するには,データの利活用を避けることができないが,データ解析技術等の習得には多大な労力を要する。本研究で作成したWeb applicationツールの利用を通じて,様々な保健医療政策において,データに基づく意思決定の支援を促進していくことが求められる。
キーワード がん対策,Nordpredモデル,Web application,がん死亡率経時変動予測