論文
第69巻第5号 2022年5月 看護系大学生および社会人における
丸山 未菜実(マルヤマ ミナミ) 太田 佳菜子(オオタ カナコ) 伊藤 玲佳(イトウ レイカ) |
目的 日本ではヒトパピローマウイルス(以下,HPV)ワクチン接種の積極的勧奨は終了したが,先進国の中でもワクチン接種率と子宮頸がん検診受診率が低い。本研究は,看護系大学生と社会人の子宮頸がん予防行動を高める支援方法を検討するために,看護系大学生および社会人における子宮頸がん予防行動の現状,子宮頸がん予防に関する知識と認識を明らかにすることとした。
方法 量的横断的研究デザインであり,看護系大学の学生および社会人に無記名自記式調査票を用いて調査した。2020年7月から8月に,個別郵送法とオンラインでデータを回収した。調査内容は属性,子宮頸がん予防行動の現状,子宮頸がん予防に関する知識および認識であった。因子分析,信頼性分析,相関分析,t検定,χ2検定またはFisherの直接確率検定,多重比較を用いて分析を行った。
結果 対象者のうち学生837名,社会人430名,合計1,267名に調査依頼を行い,有効回答438部(学生356部,社会人82部)を分析データとした。有効回答率は学生42.5%,社会人19.1%であった。子宮頸がん検診受診者は31.1%で,HPVワクチン接種者は28.5%であった。子宮頸がん検診を受けた人は学生より社会人に有意に多く(p<0.001),医療機関および自治体からの情報獲得者が多かった(p<0.01)。HPVワクチン接種者は社会人より学生に有意に多く(p<0.01),医療機関(p<0.05),自治体(p<0.01),教育機関(p<0.05)からの情報獲得者が多かった。子宮頸がんの予防認識得点は社会人が学生より有意に高かったが(p<0.001),検診およびワクチン接種の有無とは関連がなかった。HPVワクチン接種ありの人はHPVワクチン接種なしの人より,子宮頸がん予防知識得点が有意に高く(p<0.05),子宮頸がん検診ありの人は検診なしの人より子宮頸がん予防知識得点が有意に高かった(p<0.05)。
結論 子宮頸がん検診受診率は社会人と比較して学生が低く,HPVワクチン接種率は社会人と比較して学生が高かった。子宮頸がん検診受診者,HPVワクチン接種者は医療機関や自治体から情報獲得をしていた人が多かった。子宮頸がん予防に関する知識の高さは検診受診経験およびワクチン接種経験と関連していた。
キーワード HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン,子宮頸がん,検診,ワクチン,予防知識