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論文記事:LGBT当事者における医療機関への受診の実態とケアニーズ 202207-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第69巻第7号 2022年7月

LGBT当事者における
医療機関への受診の実態とケアニーズ

鈴木 美紗稀(スズキ ミサキ) 浦中 桂一(ウラナカ ケイイチ) 朝澤 恭子(アサザワ キョウコ)

目的 性的マイノリティであるLGBT当事者は医療現場での差別,侮辱を受けた経験から受診を躊躇する傾向にある。本研究の目的は,LGBT当事者がより抵抗がなく医療機関を受診できる支援の示唆を得るために,医療機関への受診の実態とケアニーズを明らかにすることである。

方法 研究デザインは量的記述的横断研究であり,調査期間は2020年6~11月であった。対象者はLGBT当事者65名であった。調査内容は属性,日本および海外での受診実態,不快な体験,受診時の不都合な体験,ケアニーズであった。分析は,記述統計量を算出し,Fisherの正確確率検定を実施した。

結果 調査票をLGBT当事者65名に配布し,有効回答33部(有効回答率50.8%)を用いてデータ分析を行った。対象者の年齢は20歳代93.9%,30歳代6.1%であった。日本での病院受診経験者90.9%の受診理由は,身体不調66.7%,定期的な受診36.7%,ホルモン療法36.7%であった。不快な経験は,ありが40%であり,内容は本名での呼称50%,周囲からの視線41.7%,身体について医療目的以外の質問8.3%であった。受診時の不都合な体験は,ありが23.3%であり,内容は性行為に関する回答に悩む,性別の回答に悩む,本人と認識されないであった。トランスジェンダー群は,それ以外の群よりも医療機関で不快な体験をした人が有意に多かった(p<0.01)。医療従事者への対応ニーズは,LGBT知識の高さ45.5%,問診票の性別欄の工夫42.4%,自覚している性別で対応42.4%であった。また,受診のための環境ニーズは,LGBTに考慮したトイレ42.4%,シャワー室・更衣室の環境工夫36.4%,待合室の環境工夫12.1%であった。

結論 LGBT当事者の医療機関への受診理由は身体的不調,定期的な受診,ホルモン療法であった。医療機関での不快な体験は本名の呼称,周囲からの視線などであり,受診時の不都合な体験は,性別の回答に悩む,本人と認識されないなどであった。医療従事者に対するLGBTに関する知識向上のためのセミナーが必要であり,施設には性別に関係なく使用できるトイレや更衣室等の設置を現在より多く設置することが必要であることが示唆された。

キーワード 性的マイノリティ,LGBT,横断研究,ケアニーズ

 

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