論文
第69巻第7号 2022年7月 京都府および府内市町村の新人保健師における
|
目的 京都府では,2012年に「新人保健師研修ガイドライン」を策定し研修を実施している。本研究では,新人保健師が必要とする基礎能力到達目標の到達度について,入職後1年間の推移を京都府,府内市,府内町村別に比較検討することを目的とした。
方法 対象者は,2012~2018年度の7年間に新人保健師研修ガイドラインに基づく研修を受講した新人保健師140名(京都府保健所27名,府内市91名,府内町村22名 ただし政令指定都市の京都市を除く)とした。新人保健師がプリセプターや所属の人材育成責任者の指導を受け記入した「新人保健師の到達目標チェックリスト(厚生労働省:2011)」の自己評価結果を回収し,研修前後の有効な回答が得られた105名について,京都府保健所,府内市,府内町村の各群における目標到達度の入職後1年間の推移を明らかにした。
結果 チェックリストによる到達度の推移では,組織人としての能力(所属機関の理解,部署内のコミュニケーション)に関するすべての項目が3群ともに有意に高くなった。専門職としての能力Ⅰ(個人,家族,小グループの健康課題解決)に含まれる,個人・家族・小グループに対する活動展開,対象者との信頼関係に関する能力の多くの項目は3群ともに到達率が有意に高くなった。また,専門職としての能力Ⅱ(集団・地域の健康課題解決)は,3群ともに到達度が有意に高くなった項目はなく,特に健康危機管理に関する項目の到達度は,府および府内市は入職後1年では低い。専門職としての能力Ⅲ(社会資源の開発と施策化)は府および町村に有意な変化はなかった。予算案や施策化の根拠資料の作成は到達度が低かった。自己管理・自己啓発に関する能力のうち,自己のストレスマネジメントや健康管理に関する能力は3群ともに有意に高くなった。
結論 地方自治体の組織形態に関わらず最も早く到達できる基礎能力がある一方,新人研修内容が到達度向上に影響していると考えられる項目が認められた。3群による到達度の差異については,所属組織における実務経験の内容とOJTの体制等との関連があることが示唆された。到達度が低い項目については,有効な指導,支援体制を整備する必要がある。
キーワード 新人保健師,到達目標,チェックリスト,府/市/町村,人材育成