論文
第69巻第8号 2022年8月 医療機関の稼働状況が医療費に与える影響について鈴木 健二(スズキ ケンジ) 八郷 秀之(ハチゴウ ヒデユキ) |
目的 医療費の変動要因のうち,日曜日や祭日および土曜日等の数の差により医療機関の稼働状況が変化することによる影響について,直近のデータに基づいて推計を行い,その結果について考察する。
方法 直近のデータのうち,医療費に大きな影響を及ぼすと考えられる制度改正等の影響が少ない72カ月間の1人当たり医療費の対前年同月比の伸び率を用い,そこから診療報酬改定の影響,閏日の影響,またインフルエンザと花粉症の影響を取り除いて得られた伸び率を被説明変数とし,「日曜・祭日等」「土曜日」「休日でない木曜日」「連休数」の数の対前年同月差を説明変数とした重回帰分析を行った。また,得られた結果を用いて過去の医療費の伸びを補正した場合の結果についての検討を行った。
結果 休日数等が総医療費の伸びに与える影響は,「日曜・祭日等」が1日当たり△2.2%,「土曜日」が△0.9%,「休日でない木曜日」が△0.6%,「連休数」が+0.4%となった。
結論 重回帰分析における適切性を評価する指標はおおむね問題ない水準となった。また,以前行っていた同様の分析結果と比較すると,「日曜・祭日等」の影響は小さくなり,「土曜日」は同程度,「休日でない木曜日」は若干大きくなっており,これは以前と比べ3日以上の長期の連休が多くなり「日曜・祭日等」においても稼働している医療機関があり,医療費を減少させる効果が小さくなったことが想定される。また,「連休数」は他の係数とは逆方向(プラス)の影響となり,長期の連休にあっては,医療費の減少効果を抑える結果となっている。また今回得られた結果を用いて過去の医療費の伸びを補正した場合,従前の係数を用いたものと比較して,補正後の伸び率の分散が小さくなる効果がみられた。
キーワード 医療費,メディアス,休日,医療機関