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論文記事:精度管理指標によるがん検診の体制整備の評価 202208-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第69巻第8号 2022年8月

精度管理指標によるがん検診の体制整備の評価

町井 涼子(マチイ リョウコ) 高橋 宏和(タカハシ ヒロカズ) 中山 富雄(ナカヤマ トミオ)

目的 わが国のがん検診精度管理指標の一つである「事業評価のためのチェックリスト」(以下,チェックリスト)に基づいて,現在の対策型検診(健康増進法に基づく住民検診)の体制整備状況を評価した。

方法 2016~2020年度に胃がん,大腸がん,肺がん,乳がん,子宮頸がん検診を行った全市区町村を対象に,チェックリストの遵守状況を調査した。調査はチェックリストに基づいて独自に作成した質問票を用いて行い,項目ごとに遵守/非遵守の2択で回答を得た。結果を基に,チェックリストの全項目合計の遵守率(全国値,都道府県別),および項目別の遵守率を算出した。

結果 全期間を通じて調査の回収率は95%以上だった。全項目合計の遵守率(全国値)は5がん共通で改善し,集団検診では約70%から約80%に,個別検診では約60%から約70%に改善した。遵守率の推移はがん種や検診方式による違いはなく,全期間を通じて同様に年々増加した。項目別の分析では,対象者名簿と受診者台帳の作成,地域保健・健康増進事業報告,プロセス指標値の単純集計に関する項目の遵守率は比較的高く,一方,個別受診勧奨,精検結果把握と精検勧奨,検診機関の質担保では遵守率が比較的低かった。集団検診と比較して個別検診の遵守率は低かった。都道府県別の分析では全期間を通じて遵守率はばらついていたが,年次が進むにつれて遵守率が低い県の水準が改善し,都道府県格差は縮小した。

結論 2016年以降,わが国の対策型検診の体制整備状況は全国的に改善傾向にある。残る課題として,個別検診全般の体制整備の遅れ,集団検診における個別受診勧奨,精検結果把握と精検勧奨,検診機関の質担保の体制整備の遅れが示唆された。これらの課題解消には,がん検診の実施主体である市区町村の自助努力に加え,国の指針に従って各都道府県が管轄下地域の状況を詳細に把握し,具体的な改善策を助言・指導することが必要である。国はこれらの活動状況を広く把握し,体制改善への影響を評価するとともに,優良事例を全国に展開することが求められる。

キーワード がん検診,精度管理指標,事業評価のためのチェックリスト,対策型検診

 

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