論文
第69巻第8号 2022年8月 介護職員の職場外・職場内研修への参加と成長実感の関連河内 康文(コウチ ヤスフミ) |
目的 本研究は,介護職員の職場外・職場内研修への参加と成長実感の関連を明らかにすることとした。
方法 2021年2月に調査会社を通してWeb調査を実施し,回答が得られた429名の介護職員に対して,越境的学習に関する尺度,能力向上尺度,組織コミットメント尺度,を用いて探索的因子分析,確認的因子分析,分散分析およびTukeyによる多重比較を実施した。
結果 回答者は男性154名(35.9%),女性275名(64.1%)で年齢は40歳代が最も多く14.2%,施設種別は訪問介護・通所介護など39.9%,介護老人福祉施設34.7%であった。所有資格は介護福祉士58.0%,ヘルパー系31.7%であり,研修参加は「参加なし」27.0%,「職場のみ参加」35.4%,「職場外のみ参加」4.7%,「職場外・職場内両方参加」32.9%であった。能力向上,組織コミットメントの各尺度と,①職場外・職場内のどちらにも参加したことがある群(職場外・内群),②職場内のみ参加したことがある群(職場内群),③職場外のみ参加したことがある群(職場外群),④参加したことがない群(参加なし群)の4群を分散分析した結果,有意な群差がみられた。多重比較(5%水準)では,能力向上において,「①職場外・内群」>「②職場内群」「④参加なし群」という結果が得られた。組織コミットメントでは,「①職場外・内群」>「④参加なし群」であった。
結論 研修を通した成長実感は,①職場外・職場内のどちらにも参加したことがある群で高い傾向がみられた。①では,組織コミットメントも高い傾向にある。介護職員は,介護現場の課題を認識し,職場外・職場内研修で課題への対応する学びを踏まえて,再度チームで相互に学び合い相互に成長する。介護事業所は,このサイクルをイメージした職場外・職場内研修を意図し,介護職員のキャリア形成にも反映させる取り組みが人材定着に向けて効果的であることが示唆された。
キーワード 介護職員,人材定着,職場外・職場内研修,能力向上,キャリア形成