論文
第69巻第12号 2022年10月 対面・非対面交流のタイプ別にみた高齢者の主観的健康:
福定 正城(フクサダ マサキ) 斉藤 雅茂(サイトウ マサシゲ) |
目的 本研究は,高齢者の交流タイプを対面交流の頻度と非対面交流の頻度から4群に分け,それぞれの交流タイプと主観的健康との関連を検証することを目的とした。
方法 日本老年学的評価研究(JAGES)によって2019年に実施された要介護認定を受けていない高齢者を対象にした質問紙調査(回収率69.4%)のうち,使用変数が含まれる22,809人を分析した。従属変数には,主観的健康指標として健康度自己評価と抑うつ(GDS-15)を用いた。独立変数には,対面・非対面交流頻度として4つの指標を使用し,対面・非対面交流がそれぞれ週1回以上か否かで「孤立型」「非対面中心型」「対面中心型」「交流豊富型」に分類した。各交流タイプの該当割合を算出し,健康度自己評価不良および抑うつ状態の割合について,同居者の有無で層別化し記述統計を確認した後,各交流タイプの間でFisherの正確確率検定による多重比較(Bonferroni法)を行った。その後,多重代入法により欠損値を補完し,同居者の有無で層別化してポアソン回帰分析を行った。
結果 解析の結果,交流タイプの割合は,交流豊富型群がほぼ半数,孤立型群が約25%,対面中心型群および非対面中心型群が約15%であった。多重比較によれば,健康度自己評価は同居者ありで,抑うつは同居者の有無にかかわらず,対面中心型群と非対面中心型群との間以外に有意差が認められ,健康度自己評価は同居者なしで孤立型群と各交流タイプとの間に有意差が認められた。ポアソン回帰分析の結果,孤立型群と比べて,交流豊富型群の健康度自己評価不良への該当しやすさは,同居者なしで0.71(95%信頼区間,以下,95%CI:0.58-0.88)倍,同居者ありで0.76(95%CI:0.68-0.85)倍であった。抑うつ状態への該当しやすさは,同居者なしで0.37(95%CI:0.27-0.51)倍,同居者ありで0.39(95%CI:0.32-0.47)倍であった。一方で,孤立型群と比べて,非対面中心型群の健康度自己評価不良への該当しやすさは,同居者なしで0.70(95%CI:0.51-0.96)倍,同居者ありで0.89(95%CI:0.78-1.02)倍であった。抑うつ状態への該当しやすさは,同居者なしで0.62(95%CI:0.41-0.93)倍,同居者ありで0.71(95%CI:0.55-0.91)倍であった。
結論 高齢者の交流タイプ別にみると,交流豊富型群が最も主観的健康と関連し,対面中心型群および非対面中心型群であっても,主観的健康に寄与し得ることが示唆された。非対面交流は,身体機能低下の影響を受けにくい交流媒体であるため,加齢による社会的ネットワークの縮小を防ぐ可能性をもつと考えられる。
キーワード 対面交流,非対面交流,交流タイプ,健康度自己評価,抑うつ,社会的孤立