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論文記事:社会福祉協議会における法人後見の現状と課題 202211-06 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第69巻第13号 2022年11月

社会福祉協議会における法人後見の現状と課題

-意義,意思決定支援,公的支援のあり方を中心に-
関根 薫(セキネ カオル) 鵜沼 憲晴(ウヌマ ノリハル)

目的 認知症高齢者の増加等により今後成年後見の需要が高まる一方,専門職後見人ならびに市民後見人の大幅増加が見込めない現状を踏まえ,本研究では,すべての基礎自治体に設置されている市区町村社会福祉協議会(以下,社協)による法人後見の可能性に焦点をあて,その意義を検証するとともに,意思決定支援や公的支援のあり方等,社協による法人後見を促進するための具体的な課題について考察することを目的とした。

方法 全国の社協1,741件を対象に,郵送法による自計式調査票を用いた悉皆調査を実施した。調査期間は,2020年2月から4月である。調査票の有効回答数は953件,有効回答率は54.7%であった。本研究では,調査の項目のうち社協による法人後見の受任状況・体制,社協が法人後見を実施する意義,意思決定支援の実態,社協の法人後見を推進していくための課題等に焦点を絞って考察を行った。

結果 社協が受任しているケースのうち約5割が「市区町村長申立」,約7割が「経済的困窮世帯」であった。後見業務では約7割が兼任職員のみで担っており,財源が不十分な割合も約7割に上ることが明らかとなった。社協による法人後見の意義については,日常生活自立支援事業からのスムーズな移行,複合的な生活問題を抱えているケースや経済的困窮ケースへの長期継続的な対応,問題解決に向けた他機関・事業所との連携,専門職後見人等の第三者後見人が乏しい地域での対応可能性などが認められた。意思決定支援については,意思の表明に関わる支援の実施率が相対的に高かった。社協の法人後見推進に向けた課題については,専任担当職員の確保・増員,担当職員の知識・技術の向上,他機関・事業者との連携などが認められるとともに,求められる公的支援として,安定的かつ十分な財源の確保,経済的困窮ケースに対する支援などが示された。

結論 受任状況ならびに実施の意義より,社協の法人後見は成年後見におけるセーフティネットとしての役割を担っていることが明らかとなった。また,社協では意思決定支援を中心に社会福祉に関する理念やスキルが成年後見業務に反映されていることからも,社協による法人後見が共生社会における地域包括支援体制の構築に寄与することが確認できた。今後の課題として,人員や財源の確保が問題として析出されており,これらの解決策として,成年後見制度法人後見支援事業の充実化等を提起した。

キーワード 成年後見,法人後見,社会福祉協議会,意思決定支援,地域包括支援

 

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