論文
第69巻第15号 2022年12月 特別養護老人ホームにおける機能訓練体制構築のための取り組み-機能訓練指導員の他職種連携を基盤に「できている部分」に着目して-植田 大雅(ウエダ ヒロマサ) |
目的 特別養護老人ホーム(以下,特養)は機能訓練指導員を配置し,「協働・連携」の下で機能訓練に取り組むことを必須要件としている。しかし,機能回復訓練にとどまり他職種で協働する取り組みが浸透していない危険性がある。本研究では,特養における他職種連携において,機能訓練指導員の「できている」部分に着目し,利用者の重度化が進む中で機能訓練指導員が他職種とどのように関わり,連携体制を構築しているかを明らかにする。
方法 2020年8月上旬に東京都内特養558施設の施設長宛に調査用紙を郵送・依頼し,合計252施設の機能訓練指導員から回答を得た(回収率45.2%)。調査内容は,基本属性と業務内容,他職種連携などである。その中の他職種との連携に着目し,「できている」部分に関する15項目について5件法で回答を得た。主因子法による因子分析を行い,その結果を元に「他職種連携」に関する意識への影響について重回帰分析を行った(有効分析数217名)。また,連携していると思う職種について挙げてもらった。
結果 因子分析の結果,第Ⅰ因子「重度化対策・予防」(α=0.862),第Ⅱ因子「介助方法の指導」(α=0.820),第Ⅲ因子「周辺環境調整協力」(α=0.628),第Ⅳ因子「福祉機器の活用と指導」(α=0.599)の4因子が得られた。重回帰分析結果より,「できている」部分の下位尺度の中で,第Ⅱ因子「介助方法の指導」,第Ⅳ因子「福祉機器の活用と指導」,第Ⅲ因子「周辺環境調整協力」が他職種連携に影響を及ぼしていた。連携していると思う職種の1番目は介護職員であった。
結論 機能訓練の連携体制の構築化は,利用者を終日ケアしている介護職員を重要な連携先として考え,機能訓練指導員は指導者的立場として介護職員を支援しながら進めていくことが,より良いサービス提供になると考える。
キーワード 機能訓練指導員,他職種連携構築,「できている」部分の因子構造,指導者的立場,利用者の重度化