論文
第69巻第15号 2022年12月 小学校高学年児童における睡眠の質と心の健康の関連要因-関東圏内の私立小学校を対象に-三森 寧子(ミツモリ ヤスコ) 髙橋 恵子(タカハシ ケイコ) 朝澤 恭子(アサザワ キョウコ)有森 直子(アリモリ ナオコ) 亀井 智子(カメイ トモコ) 新福 洋子(シンプク ヨウコ) 武内 紗千(タケウチ サチ) 谷田 恵子(タニダ ケイコ) 池田 雅則(イケダ マサノリ) |
目的 日本人の平均睡眠時間は,諸外国と比較すると最も短く,子どもも同様の傾向がある。子どもの睡眠と心の健康は互いに影響し合うものであり,早期に介入すべき健康課題の1つといえる。本研究の目的は,小学生の睡眠に関する支援の示唆を得るために,小学校高学年児童を対象に心の健康の観点から,睡眠の質の関連要因を探索することである。
方法 研究デザインは量的横断的研究であり,2014年10月に関東圏内の小学4~6年生540名を対象に自己記入式質問紙調査を行った。データ収集方法は,小学校の学校長の研究協力同意が得られた後に,児童および保護者に研究協力依頼を実施し,調査票を配布した。回収は留め置き法を用いた。調査内容は属性,睡眠の質,QOL,自尊感情,自己効力感,ソーシャルサポートであった。因子分析,信頼性分析,t検定,一元配置分散分析,重回帰分析を行った。
結果 小学校高学年の児童540名に調査票を配布し,502部の有効回答を得た(有効回答率93.0%)。対象者は男子332名(66.1%),女子170名(33.9%)であり,4年生154名(30.7%),5年生170名(33.9%),6年生178名(35.5%)であった。睡眠の質,QOL,自尊感情,自己効力感,ソーシャルサポートの5尺度はすべて,信頼性と妥当性が再確認された。睡眠の質の悪さに対して,QOLの低さ(p<0.001),ソーシャルサポートの低さ(p<0.001),自尊感情の低さが有意に影響を与えていた(p<0.01)。インターネット利用時間が睡眠の質の悪さに有意に影響を与えていた(p<0.01)。
結論 回答者の17.5%を示した睡眠障害のある児童はQOLが低く,ソーシャルサポートが得られず,自尊感情が低いことが明らかとなった。子どもの発達課題を考慮しながら睡眠に関する支援を学校と家庭が連携して取り組む必要性が示唆された。
キーワード 子ども,睡眠,心理社会的,QOL,横断調査,睡眠障害