論文
第70巻第1号 2023年1月 高齢のボランティアによる介護予防体操普及活動と
小澤 多賀子(コザワ タカコ) 栗盛 須雅子(クリモリ スガコ) 黒江 悦子(クロエ エツコ) |
目的 地域在住高齢者によるボランティア活動への従事は,介護予防の取組促進と社会保障の持続可能性への期待が大きい。しかし,高齢のボランティアによる介護予防体操普及活動と,活動効果指標としての介護保険料,介護給付費,要介護認定率との関連について検討した報告は見当たらない。そこで,本研究では高齢のボランティアによる介護予防体操普及活動とその活動効果指標としての介護保険料,介護給付費,要介護認定率との関連を検討し,高齢者によるボランティア活動の有効性を明らかにすることを目的とした。
方法 茨城県では平成17年からシルバーリハビリ体操指導士養成事業を開始し,地域在住高齢者へ介護予防体操を普及する高齢のボランティアを養成している。本研究の対象は,本事業を展開する茨城県全市町村(n=44)とした。体操普及活動指標は平成17~29年度における65歳以上人口千人あたりの指導士養成人数,教室延べ開催数,教室参加指導士延べ人数,住民参加延べ人数とした。活動効果指標は,介護保険料(第7期第1号保険料),11年間(平成19~29年度)の65歳以上人口あたりの介護給付費(合計,要支援1・2,要介護1~5)の増減,12年間(平成18~29年度)の要介護認定率(合計,要支援1・2,要介護1~5)の増減とした。分析は市町村ごとの体操普及活動指標と活動効果指標との関連について,Spearmanの順位相関係数から検討した。
結果 44市町村において,住民参加延べ人数と介護保険料,指導士養成人数と介護給付費(要支援1・2)の増減,教室延べ開催数および住民参加延べ人数と要介護認定率(要支援1・2)の増減とに有意な負の相関が認められた(P<0.05)。また,44市町村において,指導士養成人数と要介護認定率(要介護1~5)の増減とに有意な正の相関が認められた(P<0.05)。
結論 本研究の結果,高齢のボランティアによる介護予防体操普及活動は,市町村において介護保険料や要支援者における介護給付費および要介護認定率の増加を抑制する可能性が示唆された。
キーワード 高齢のボランティア,介護予防,体操普及活動,介護保険料,介護給付費,要介護認定率