論文
第70巻第1号 2023年1月 都道府県レベルにおける
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目的 高齢者の自殺対策を進めるうえでソーシャル・キャピタルが注目されているが,都道府県レベルのソーシャル・キャピタルと自殺死亡率の関係については,報告が少ない。そこで,都道府県レベルのソーシャル・キャピタル指標と自殺死亡率との関係を明らかにすることを目的とした。
方法 都道府県を分析単位とした地域相関分析と重回帰分析を行った。目的変数は各都道府県の2010-12年の男女別60歳以上自殺SMRとし,説明変数のソーシャル・キャピタル指標は,平成23(2011)年社会生活基本調査の65歳以上男女別行動者率を用いた。社会参加の行動者率は①スポーツ,②学習・自己啓発・訓練,③ボランティア,④趣味・娯楽,⑤これらを合計した4種総計行動者率とした。調整変数は,自殺との関連性が報告され公的データで入手可能なものとして,1人当たり県民所得,高齢単身世帯割合,完全失業率,可住地人口密度,日照時間,降水日数,最低気温を用いた。分析方法は,①相関分析では,用いた変数間の相関係数Spearmanのρを算出し,相関関係を検討した。②重回帰分析では,男女別60歳以上自殺SMRを目的変数とし,12変数を用いて重回帰分析(強制投入法)を行った。
結果 2変数間の関係では,男性自殺SMRは,スポーツ,学習・自己啓発・訓練,趣味・娯楽,4種総計行動者率の4指標と負の相関(p<0.05)がみられた。女性自殺SMRは,学習・自己啓発・訓練のみと負の相関(p<0.05)がみられた。重回帰分析では,男性自殺SMRは,学習・自己啓発・訓練,趣味・娯楽,4種総計行動者率の3指標と負の関連(p<0.05)がみられた。女性自殺SMRは,学習・自己啓発・訓練,ボランティアの2指標と負の関連(p<0.05)がみられた。
結論 都道府県レベルの社会参加の行動者率と自殺SMRとの関係を調べた結果,男性では,学習・自己啓発・訓練,趣味・娯楽,4種総計行動者率,女性では学習・自己啓発・訓練,ボランティアへの参加割合が多いと自殺SMRが低いという負の関連がみられた。これらから地域において学習・自己啓発・訓練などの参加促進を通じ,ソーシャル・キャピタルを醸成することが自殺対策につながる可能性が示唆された。
キーワード 自殺,SMR,ソーシャル・キャピタル,社会生活基本調査,都道府県,行動者率