論文
第70巻第2号 2023年2月 基本チェックリストを用いた
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目的 高齢者が早期の介護予防の一環として将来の要介護化リスクを自己評価する際には,長期にわたって簡便かつ正確に要介護化リスクを予測できる尺度が求められる。そこで,本予備的研究では現存する要介護化リスク評価尺度の一つである基本チェックリスト(以下,KCL)を用いて追跡8年間における要介護化リスクを簡便に予測するリスクスコア(以下,RS)を試作し,その予測能(予測モデルのイベント発生リスクに対する予測能力)を検証した。
方法 2011年のベースライン調査に参加した福岡県糟屋郡篠栗町在住の要支援・要介護認定を受けていない高齢者2,629名のうち,データが得られた2,209名を解析対象とした。KCL25項目,年齢階級(65-69歳,70-74歳,75-79歳,80-84歳,85歳以上),性のうち,要支援・要介護認定と関連する因子を多変量Cox比例ハザード分析に同時投入し,変数減少法(p<0.1)で因子を抽出した。非標準化偏回帰係数(以下,B)の最小値を1.0に補正した際の補正率を全項目のBに乗じ,四捨五入した整数値を各項目の点数,その合計をRSとした。要支援・要介護認定の危険因子を調整した多変量Cox比例ハザード分析により,RSの1点上昇ごとの要支援・要介護認定ハザード比(以下,HR)とその95%信頼区間(95%CI)を算出した。また,RSの要介護化リスクに対する予測能を検証する目的でC統計量とその95%CIを算出した。
結果 RSは年齢階級とKCL9項目(運動機能3項目,栄養状態1項目,認知機能3項目,抑うつ2項目)の10因子で構成され,合計得点の範囲は0-26点であった。また,RSは危険因子とは独立して要介護化リスクと関連し(HR:1.21,95%CI:1.19-1.23),要介護化リスクに対するC統計量は0.78(95%CI:0.76-0.80)であった。
結論 8年間の要介護化リスクを簡便に予測するRSを試作した結果,要介護化リスクの有意な予測因子であるKCL9項目と年齢階級の10項目で構成される簡便なRSが作成された。今後,将来の要介護化リスクを長期的に予測する最適な尺度を確立するには,既に短期間で外的妥当性が確認されている他の要介護化リスク評価尺度において長期の追跡期間で妥当性を検証することとあわせて,本研究で作成されたRSでも長期の追跡期間で外的妥当性を検証する必要がある。
キーワード 基本チェックリスト,要介護認定,リスクスコア,前向き追跡研究,要介護化リスク評価尺度