論文
第70巻第2号 2023年2月 ヘルスキーパー雇用企業に対する
近藤 宏(コンドウ ヒロシ) 石崎 直人(イシザキ ナオト) 福島 正也(フクシマ マサヤ) |
目的 近年,事業所内に設置された施術所(治療室)において産業医等と連携して社員の健康維持,増進を図るため,あん摩マッサージ指圧および鍼灸の施術を行う視覚障害者がヘルスキーパーとして企業に雇用される機会が増加している。そこで,ヘルスキーパーの雇用状況や雇用に対する意識について明らかにするために調査を行った。
方法 調査対象は,関東甲信越地区においてヘルスキーパーを雇用している企業206社とした。調査は,無記名による自記式のアンケート調査により実施した。調査項目は,調査対象企業の基本属性,ヘルスキーパーの雇用と意識,新型コロナウイルス感染症による業務への影響に関する項目とした。
結果 54件の回答があった(回収率26.2%)。企業の主な業種は,サービス業11件(20.4%)が最も多く,次いで情報通信業9件(16.7%)であった。ヘルスキーパーの雇用人数の中央値は2.5人であった。雇用形態は,正社員と契約社員ではそれぞれ30件(55.6%)であった。ヘルスキーパールームの設置のきっかけは,従業員の健康の保持と増進のため49件(90.7%)が最も多く,次いで障害者の法定雇用率を達成させるため37件(68.5%),企業の社会的責任を果たすため22件(40.7%)と続いた。「ヘルスキーパーは貢献できていると思うか」は,肯定的意見(そう思う,どちらかといえばそう思う)51件(94.4%)であった。「ヘルスキーパーは従業員の健康保持増進に役立っていると思うか」は,肯定的意見(そう思う,どちらかといえばそう思う)51件(94.4%)であった。新型コロナウイルス感染症による業務への影響については,ヘルスキーパーの勤務状況が従来通りで変わりがなかったのは7件(13.0%)にとどまり,多くは在宅勤務(一部または全部)や時短勤務となり,通常の業務が行うことができていなかった。
結語 関東甲信越地区におけるヘルスキーパーを雇用している企業を対象にヘルスキーパーの雇用状況や雇用に対する意識について調査し,ヘルスキーパーの雇用や今後の視覚障害を有する鍼灸マッサージ師の雇用を推進する上で貴重な基礎資料を得ることができた。
キーワード 視覚障害者,ヘルスキーパー,雇用実態,鍼灸,マッサージ,調査