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論文記事:COVID-19流行前後の健康関連行動の変化と時間割引率の関連 202303-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第70巻第3号 2023年3月

COVID-19流行前後の健康関連行動の変化と
時間割引率の関連

-J-SHINE2017,2020を用いた分析-
大川 卓朗(オオカワ タクロウ) 高木 大資(タカギ ダイスケ)

 

目的 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前後での健康関連行動(運動,飲酒,喫煙)の増減を説明する要因として行動経済学的概念である時間割引率に着目し,時間割引率が低い人々と高い人々の間の健康関連行動の差がCOVID-19流行前よりもコロナ禍(COVID-19流行下)において拡大したかを検討した。

方法 東京近郊4市区に在住の25歳から50歳までの男女から確率的に抽出された人々を対象とした,まちと家族の健康調査(J-SHINE)の第3回(2017年)と第4回(2020年)のデータを使用した。両調査に回答し,かつ分析に使用する変数に欠損のなかった1,048人のデータを分析対象とした。目的変数として3種の健康関連行動(運動習慣,毎日の飲酒習慣,喫煙習慣:それぞれ2017年と2020年の両調査で測定)を,説明変数として回答した年(2020年ダミー),時間割引率,それらの交互作用項を使用し,調整変数として年齢,性別,最終学歴,テレワーク・在宅勤務,配偶者・パートナーとの同居を投入したロジスティック回帰分析を行った。

結果 運動習慣については,2020年ダミー×時間割引率の交互作用効果が統計学的に有意であり(オッズ比[OR]=1.35,95%信頼区間[CI]:1.00-1.83),時間割引率が高い人々において2017年から2020年にかけて運動習慣者割合の増加が大きかったことが示された。一方,毎日の飲酒習慣(OR=1.01,95%CI:0.86-1.18)と喫煙習慣(OR=0.92,95%CI:0.80-1.05)については,いずれも2020年ダミー×時間割引率の交互作用効果は統計学的に有意ではなかった。

結論 本研究の結果から,COVID-19流行前に比べて,流行下の方が時間割引率の高低による運動習慣の格差が縮小していることが示された。しかし,コロナ禍後には再び格差が拡大し得るのか,そして,格差が再拡大するのだとすればコロナ禍後のヘルスプロモーションをどのように行っていくべきか,といった点については継続的な調査研究により検討していく必要がある。

キーワード COVID-19,運動,飲酒,喫煙,時間割引率,時間選好

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