論文
第70巻第4号 2023年4月 緊急入院した脳梗塞患者の
桝田 真里(マスダ マリ) 馬場園 明(ババゾノ アキラ) |
目的 脳梗塞は発症後の経過や後遺症の程度に個人差があり,地域や家庭内に患者を受け入れる余裕がなければ急性期病院での在院日数が長くなると予測される。本研究では急性期脳梗塞患者に関する入院期間の長期化に影響する社会的要因を検討した。
方法 DPC対象病院である福岡県済生会福岡総合病院に脳梗塞で緊急入院した694名を対象として,院内データから患者特性と社会的要因の項目を抽出した。社会的要因と入院期間の関係を明らかにするために,DPC制度で定められた基準に基づいて「全国平均在院日数以内での退院群」と「長期入院群」に分け,2群の患者特性と社会的要因の割合を比較した。ロジスティック回帰モデルを利用して,長期入院に影響する社会的要因を検討した。
結果 長期入院群と対照群間で「キーパーソンとの同居あり」「経済的不安あり」「低所得である」「生活保護受給あり」の項目に有意差が認められた。ロジスティック回帰分析の結果,長期入院に影響すると選択された因子は「経済的不安あり」で,特に「移動能力の自立あり」に区分された患者は「経済的不安あり」の場合に長期入院群になりやすいことが示された。
結論 独居でないことよりも介護力を有する身近なキーパーソンの存在の方が医療機関の退院調整に貢献すると示唆される。経済的不安を抱える患者が入院中に社会的資源を活用するための手続きを行うことが入院期間の延長の要因となる可能性がある。
キーワード 急性期脳梗塞,入院期間,DPC対象病院,社会的要因,身近なキーパーソン