論文
第70巻第4号 2023年4月 大都市で生活する軽度認知機能低下を認める
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目的 本研究は,大都市で生活する軽度認知機能低下が認められる一人暮らしの利用者に対し,介護支援専門員の視点から訪問看護利用の効果を見いだすことを目的とした。
方法 介護サービス情報公表システムに登録している,関東地区の政令指定都市A市すべての居宅介護支援事業所926カ所に勤務する介護支援専門員を対象にした。要介護1で認知機能低下を認め訪問看護を利用しているケースと,訪問看護以外の他の介護サービスを利用しているケースを担当する者それぞれ1名抽出した。抽出された介護支援専門員に,担当する利用者の概要,介護支援専門員からの視点から判断した病状,認知機能,生活状況,家族の不安について,担当当初から現在までの状況の変化について,無記名自記入式質問紙による調査を実施した。得られたデータは,訪問看護利用者群と訪問看護未利用者群の2群に分け,介護支援専門員の担当当初から現在までの状況の変化をクロス集計し,各々の関係についてχ2検定を行った。さらに効果の認められた項目についてロジスティック回帰分析を行った。
結果 質問紙の回収は256カ所(回収率27.8%)で介護支援専門員386名から回答を得た。そのうち,担当するケースで「独居」と回答した160名を本研究の分析対象とした。訪問看護を利用しているケース89名を「訪問看護利用者群」とし,訪問看護以外の他の介護サービスを利用しているケース71名を「訪問看護未利用者群」とした。両群とも平均年齢は82歳であった。「訪問看護利用者群」と「訪問看護未利用者群」に分け,利用者の変化を「病状」「認知機能」「生活状況」「家族の不安」について関係をみたところ,「認知機能」と「家族の不安」に有意な関係がみられた。そして,「認知機能」と「家族の不安」についてロジスティック回帰分析の結果,「認知機能」の維持改善においては,訪問看護の利用,認知症薬を内服中,認知症高齢者日常生活自立度判定基準に有意な関連が認められた。「家族の不安」の維持改善においては,訪問看護の利用,認知症薬を内服中に有意な関連が認められた。
結論 大都市で生活する軽度認知機能低下を認める一人暮らしの方について,介護支援専門員の視点では「訪問看護利用者群」は「訪問看護未利用者群」に比べ,認知症薬の内服や認知症高齢者日常生活自立度判定基準の影響も存在するが,認知機能は現状を維持し,家族の不安は改善されている傾向がみられた。このことは,訪問看護の利用に関する効果の1つと推察された。
キーワード 訪問看護,軽度認知機能低下,大都市,一人暮らし