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論文記事:独居認知症高齢者の在宅生活継続困難時に直面する課題の構造に関する検討 202304-06 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第70巻第4号 2023年4月

独居認知症高齢者の在宅生活継続困難時に
直面する課題の構造に関する検討

中島 民恵子(ナカシマ タエコ) 杉山 京(スギヤマ ケイ)

目的 本研究は独居認知症高齢者の在宅生活継続に向けて,介護支援専門員からみた独居認知症高齢者が在宅生活継続困難時に直面する課題の構造を明らかにすることを目的とした。

方法 オンライン調査会社のパネルを用いて,独居認知症高齢者のケアマネジメントの経験がある介護支援専門員400人に対して,Web上での質問紙調査を実施した。回答は400人から得られ,統計解析には在宅継続が困難となった独居認知症高齢者を支援した経験がある345人による資料を用いた。質問紙は在宅生活を中断した独居認知症高齢者を担当した経験の有無や,過去に担当した事例において在宅生活継続困難時に直面した課題等の調査項目で構成した。分析では,在宅生活継続困難時に直面する課題を構成する因子を確認するため,探索的因子分析を行った。さらに,抽出された因子の構成概念妥当性を,構造方程式モデリングを用いた検証的因子分析によって検討した。

結果 探索的因子分析の結果,【セルフマネジメント能力】【本人の独居生活への意欲】【住環境】【外出時の本人の注意力】【インフォーマルサポートとの関係】の5因子が抽出された。【セルフマネジメント能力】は栄養摂取,服薬管理,金銭管理等に関する項目で構成,【本人の独居生活への意欲】は本人の在宅生活に対する内面的な状況を示す項目で構成,【住環境】は生活をしていく上でバリアになりうる,商店のなさ,外出しづらい環境の項目で構成,【外出時の本人の注意力】は外出時の迷子,信号無視などによって交通事故に巻き込まれる可能性がある項目で構成,【インフォーマルサポートとの関係】は,主に家族との関わりと地域住民との関わりとの2つの側面に関する項目で構成されていた。検証的因子分析におけるモデルの適合度は統計学的許容水準を満たしており,構成概念妥当性が支持された。

結論 統計学的手法を用いて,独居認知症高齢者が在宅生活継続困難時に直面する課題の構造が確認された。独居認知症高齢者が在宅生活を望む場合に,それらを困難にしうる要因を捉える視点を持つ指標開発の一助となる点が意義深い。今後は,全国の介護支援専門員を対象とした郵送型の調査を実施,結果の一般化を図ることが課題である。

キーワード 独居認知症高齢者,在宅生活継続,介護支援専門員

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