論文
第70巻第5号 2023年5月 乳がんの住民検診における受診間隔の遵守に関連する要因-全国データの集計および地域相関分析-高橋 則晃(タカハシ ノリアキ) 高橋 宏和(タカハシ ヒロカズ)中尾 睦宏(ナカオ ムツヒロ) 山崎 力(ヤマザキ ツトム) |
目的 健康増進事業として市区町村で実施されている乳がんの住民検診における2年連続受診者の状況と特性を明らかにすることを目的とした。
方法 「地域保健・健康増進事業報告」の2018・2019年度の乳がん検診データを用いて日本全国の2年連続受診者の割合を年齢階級ごとに集計した。同割合に関連する市区町村の要因を特定するために地域相関分析を実施した。分析に用いる市区町村の背景因子には人口,産業・就業,医療に関する各変数および検診受診率の計12変数を使用した。
結果 2年分の受診者数を分母とした計算式において2年連続受診者の割合は全体で9.7%であり,年齢階級が上がるにつれて増加する傾向が認められた。地域相関分析の結果,2年連続受診者割合と最も関連が大きかった市区町村の背景因子は受診率そのものであり,そのほか総人口,人口密度,転出者割合の面で都市部に対して地方において同割合が高い傾向が示された。2年連続受診者割合と受診率との散布図から,指針通りの隔年受診を遵守している自治体とそれ以外の自治体に大きく二分している傾向が示された。
結論 利益・不利益のバランスから隔年受診が推奨される乳がん検診において,日本の全市区町村の住民検診データを用いて2年連続受診者割合の状況を明らかにした。隔年受診の遵守を意識していない自治体では積極的に受診率の向上に取り組む際に,未受診者だけでなく既に隔年で受診している市民に対しても毎年の受診を促進してしまっている可能性がある。今後の課題として,適切な受診間隔を遵守している自治体を奨励するための評価指標の確立が望まれる。
キーワード 乳がん検診,マンモグラフィ,受診間隔,受診率,不利益,地域相関分析