論文
第70巻第5号 2023年5月 小地域における高齢者の社会参加活動への
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目的 趣味や生きがい活動など高齢者の社会参加活動が活発的に行われている島根県松江市淞北台地区に着目し,参加する当事者である高齢者の社会参加活動の特徴を明らかにするとともに,社会参加活動と地域の環境的要因に対する認識から,小地域における高齢者の社会参加活動を促進する要因を明らかにすることを目的とした。
方法 先行研究などから高齢者の社会参加活動を促進する要因について30項目を設定し,当該地区の65歳以上の257名を分析対象者として2020年4月25日から5月16日までアンケート調査を実施し,探索的因子分析を行った。
結果 回答者の年代からみると,社会参加活動に参加している方は,前期高齢者より75歳以上の後期高齢者が多かった。社会参加活動の参加割合は,趣味関係では前期高齢者25.0%,後期高齢者75.0%,スポーツ関係では前期高齢者26.6%,後期高齢者73.4%,ボランティアでは前期高齢者27.7%,後期高齢者72.3%,老人クラブでは前期高齢者16.0%,後期高齢者84.0%,町内会・自治会では前期高齢者33.1%,後期高齢者66.9%,住民同士の親睦交流会では前期高齢者26.8%,後期高齢者73.2%であった。また,趣味関係のグループでは,「週1回程度」および「月1〜2回」の高頻度の参加者が合計78.4%であり,スポーツ関係のグループでは,「週1回程度」および「月1〜2回」の高頻度の参加者が合計65.6%,いずれも「年数回程度」の低頻度の参加者(趣味21.6%,スポーツ関係34.4%)より多く,他の社会参加活動より参加頻度が高かった。社会参加活動についての探索的因子分析を行った結果,小地域における高齢者の社会参加活動への参加促進要因として,「地域住民との協力による地域とのつながり」「地域活動への参加のしやすさ」「地域貢献への主体的な取り組み」「満足感や自己効力感の獲得」の4つの因子が抽出された。
結論 小地域において高齢者の社会参加活動を活性化するためには,第一に,高齢者自身の趣味や嗜好を反映した参加を促進する環境の整備を行うこと,第二に,参加者同士の緩やかな関係性を尊重しながら,参加する当事者である高齢者の主体性を最大限に活かすことが重要であること,第三に,社会参加活動を促進するためには,高齢者自ら認めた成果が実感できるようなプログラムの創出が求められる。
キーワード 小地域,高齢者,社会参加活動,参加促進要因,因子分析