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論文記事:病床規模別・所有形態別にみた病院機能の変遷 202306-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第70巻第6号 2023年6月

病床規模別・所有形態別にみた病院機能の変遷

-60年間の推移分析から-
加藤 尚子(カトウ ナオコ) 鈴木 修一(スズキ シュウイチ)
近藤 正英(コンドウ マサヒデ) 長谷川 敏彦(ハセガワ トシヒコ)

目的 病院の歴史的経緯を検証するために,病床規模別・所有形態別に病院機能の変遷を辿った。過去のどの時点において病院の機能が分化していったかを,病院機能の年次推移分析によって検討した。

方法 医療施設調査・病院報告において,国民皆保険達成の前年である1960年を始点としコロナ禍前年の2019年を終点とする60年間を分析期間として,一般病院を対象に,病床規模別・所有形態別に病院機能を表す各種の指標を時系列に収集した。病床規模別では,49床以下を小規模病院群,50床以上299床以下を中規模病院群,300床以上を大規模病院群と称して,3つの病院群に大別化した。所有形態別では,「国」「公的医療機関」「社会保険関係団体」「その他」を公的病院群,「医療法人」「個人」を私的病院群と称して大別化した。長期にわたる年次推移の変曲点を明らかにするために,ジョインポイント回帰分析を行った。

結果 施設数および病院機能を示す指標である一般病床割合,看護師数,退院患者数,平均在院日数,外来患者割合に関して,病院群ごとにジョインポイント回帰分析を行った結果,60年間の年次推移の傾向には,大規模病院群と公的病院群,中規模病院群と私的病院群に類似性が認められた。病院群ごとに各指標に関して,ジョインポイント回帰分析の結果抽出された年次ごとの変曲点を集計すると,合計ポイントの高かった年次は,1997年(25.06ポイント),1998年(18.19ポイント),1968年(15.41ポイント),2001年(14.64ポイント),1971年(14.10ポイント),1996年(10.07ポイント),1986年(8.19ポイント),2000年(7.81ポイント),2007年(6.41ポイント),2008年(5.72ポイント)の順になった。

結論 ジョインポイント回帰分析で抽出した変曲点を根拠に,現在の病院機能に至る変遷を辿ると,1970年頃を基点に急性期ケアと慢性期ケアの機能分化が始まり,1980年代後半に分化が確立したと想定できる。大規模病院群および公的病院群は,1960年から現在に至るまで,一貫して急性期ケアに特化した変化を遂げている。その一方,中規模病院群および私的病院群は機能の変動が大きい。しかし1960年代までは,現在にみられるような機能の相違は認められなかった。中規模病院群および私的病院群においては,1970年代以降の施設数増加に伴い慢性期ケアの機能を取り込んでいったと考えられる。1986年を変曲点に1990年代初頭の量的拡大の終了によって,その勢いは停滞した。2000年以降は,一部に急性期ケアの機能を取り込んでいる可能性があるが大きな変動は認められず,機能の相違は解消されていない。

キーワード 病床規模,所有形態,病院機能,歴史的経緯,急性期ケア,慢性期ケア

 

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