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論文記事:都道府県別の社会経済状況を測る合成指標の開発 202306-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第70巻第6号 2023年6月

都道府県別の社会経済状況を測る合成指標の開発

-健康寿命の都道府県間格差対策に向けて-
片岡 葵(カタオカ アオイ) 井上 勇太(イノウエ ユウタ) 西岡 大輔(ニシオカ ダイスケ)
佐藤 倫治(サトウ トモハル) 福井 敬祐(フクイ ケイスケ) 
伊藤 ゆり(イトウ ユリ) 近藤 尚己(コンドウ ナオキ)

目的 健康日本21(第2次)の主目標に健康格差の縮小が掲げられ,都道府県間の健康寿命の差が評価されてきた。しかし,健康格差の評価は地域間差だけでなく,地域の社会経済状況の違いも考慮することが重要である。日本では,市区町村単位の社会経済状況を包括的に測定する地理的剥奪指標が健康格差の評価に広く使用されている。一方,都道府県単位の各種公的統計を用いた指標は近年開発されておらず,健康日本21(第2次)の主目標に掲げられている健康寿命との関連も検証されていない。本研究では,都道府県単位で集計・公表されている各種統計データにより社会経済状況を測定する合成指標を作成した。また,それらが男女別の健康寿命とどの程度関連するかを観察した。

方法 先行研究をもとに都道府県の社会経済状況を示す18変数を選択し,2010年・2013年のデータを政府統計から収集した。指標作成には主成分分析を使用し,主成分得点を指標の得点として算出した。説明変数に作成した指標,目的変数に2010年・2013年の都道府県別の健康寿命を用いて,ピアソンの積率相関係数の算出と分散重み付け線形回帰を行い,作成した指標と健康寿命の関連を男女別に検討した。

結果 主成分分析の結果,2因子9変数が得られた。第1主成分は,高齢者がいる世帯の割合,住戸面積,住宅保有割合,人口集中地区の人口比率の4変数の相関が高いことから「中心部への人口偏在性」を示す因子とした。第2主成分は,母子・父子世帯の割合,サービス業の就業率,若年無業者の割合,県民所得,失業率の5変数の相関が高いことから,「経済状況」を示す因子とした。男性では,「経済状況」スコアが高い都道府県ほど健康寿命が短く(相関係数:-0.38),「経済状況」スコアが最も高い地域と低い地域の間で0.88歳の健康寿命の差があった。女性では「中心部への人口偏在性」スコアが高いほど健康寿命が短く(相関係数:-0.27),「中心部への人口偏在性」スコアが最も高い地域と低い地域の間で0.72歳の健康寿命の差があった。

結論 中心部への人口偏在性と経済状況を示す指標を得た。それぞれ,男女の健康寿命と相関がみられたことから,本指標が健康格差の評価指標として有効と考えた。得られた指標を用いて健康格差を定期的に評価することで,介入の優先地域の選定,地域の特性に応じた介入手法の開発,施策の効果評価,保健分野の枠を超えた連携等,健康格差縮小に向けた活動が前進することが期待される。

キーワード 健康格差,健康寿命,社会経済状況,地理的剥奪指標

 

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