論文
第70巻第6号 2023年6月 障害福祉サービス費用からみた居住支援と日中活動支援-自治体障害者自立支援給付データの分析-榊原 賢二郎(サカキバラ ケンジロウ) |
目的 障害者の地域移行は,施設入所・グループホーム居住・在宅という居住形態にまずは関わるが,地域生活は日中も含めて成立する。入所施設では日中・夜間が事実上一体であるが,その他の居住形態で個々の日中系サービス等がいかに利用されているかを定量的に解明する。
方法 4自治体から匿名の障害者自立支援給付データ5~14年分(最長2007-2020年度。障害者手帳データを含む)の提供を受け,居住形態や手帳等級も活用して集計した。
結果 日中の比重が大きい施設入所者とは異なり,グループホーム居住者の場合,居住支援(共同生活援助)が利用単位数の半ばを占め,日中系では生活介護・就労継続支援B型(・利用なし)に分散した。在宅者では,生活介護・就労継続支援B型のほか,訪問系の居宅介護などが利用されており,それらの比重には地域差がみられた。各居住形態における障害福祉サービスの1人当たり平均利用単位数は,施設入所者>グループホーム居住者>在宅者となった。療育手帳重度者では,グループホーム居住者・在宅者において,より平均利用単位数が高い生活介護の比率が高まるが,重度の在宅者への就労継続支援B型の提供が多い自治体もあった。居住形態ごとの療育手帳重度者1人当たり平均利用単位数は,グループホーム居住者が施設入所より高くなる傾向がみられた。日中系サービス利用者の療育手帳重度者割合をみると,生活介護が一貫して重度者中心であるのに対して,就労継続支援B型では,3自治体で重度者割合の低下傾向がみられた。
結論 居住形態や障害の重度性により,日中活動支援の利用状況も変化していた。このことは,障害者の社会参加機会やサービス供給体制への含意を有する。前者に関しては,通所サービスの中でも,就労という枠組みと「常時介護」の枠組みがどの程度選ばれるかに関わる。また,本稿の日中と夜間の総合的分析は,サービス基盤の整備の基礎資料となりうる。
キーワード 障害者総合支援法,地域移行,生活介護,就労継続支援,障害者手帳