論文
第70巻第6号 2023年6月 訪問看護サービスの利用と提供に
杉井 たつ子(スギイ タツコ) 門間 貴史(モンマ タカフミ) 武田 文(タケダ フミ) |
目的 全国市町村単位の各種統計データを用いて,訪問看護サービスの提供と利用の状況について過疎地域と全国とで比較検討した。
方法 訪問看護サービスの提供について,過疎地域と全国の①人口10万人・老年人口・1㎢あたりの訪問看護ステーション(ST)数,②人口10万人・老年人口・1施設あたりの訪問看護STの常勤看護師数,③訪問看護サービス提供施設の設置主体別内訳を算出した。訪問看護サービスの利用について,過疎地域と全国の要介護認定者における④利用割合,⑤1人あたりの利用回数,⑥訪問看護サービス提供1施設あたりの利用人数(月平均値)を,介護区分別に算出した。上記③を除く全項目について,全国を母集団として過疎地域との相違を母比率の差の検定およびt検定により検討した。③については,全国の設置主体別内訳を理論値とし過疎地域における観察値の適合度についてχ2検定を行ったのち,各設置主体別割合に関する残差分析を行った。
結果 訪問看護サービスの提供状況をみると,人口10万人・老年人口・1㎢あたりの訪問看護ST数,および人口10万人・老年人口・1施設あたりの訪問看護STの常勤看護師数は,いずれも過疎地域が全国より有意に少なかった。また訪問看護サービス提供施設の設置主体別内訳は,過疎地域は全国より営利法人が少なく,社会福祉法人(社協),その他法人,社団・財団,農協,地方公共団体(市町村等)が多かった。要介護認定者における訪問看護サービスの利用状況をみると,サービスの利用割合は要支援1を除くすべての介護区分において,利用者1人あたりの利用回数はすべての介護区分において,訪問看護サービス提供1施設あたりの利用人数(月平均値)は要支援1を除くすべての介護区分においても過疎地域が全国より有意に少なかった。
結論 過疎地域は全国と比較して,人口および面積あたりの訪問看護ST数と常勤看護師数が少なく,訪問看護サービス提供施設の設置主体は営利法人が少なく地方公共団体が多く,要支援1を除くすべての要介護認定者において利用割合が少なかった。利用者1人あたりの利用回数と,訪問看護サービス提供1施設あたりの利用人数も少ないことが明らかとなった。
キーワード 訪問看護サービス,過疎地域,市町村,要介護認定者,提供,利用