論文
第70巻第11号 2023年9月 サービス付き高齢者向け住宅における
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目的 本研究は,サービス付き高齢者向け住宅(以下,サ高住)のタイプ別に,不適切なケア等の実態と意識の現状を明らかにすることを目的とした。
方法 調査は「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」に2021年10月末時点で掲載され,開設後1年以上経過しているサ高住,4,753件に勤務する介護職員を対象にアンケートを配布して行い,調査に同意できる場合のみ回答するよう依頼した。アンケートの項目は不適切なケア等の実態,不適切なケア等の意識,勤務するサ高住の特性と職員の属性で構成した。分析は,まず不適切なケア等の実態・意識について,それぞれ因子分析を行った。次に,抽出された各因子の下位項目を単純加算した得点を下位尺度得点とし,Kruskal-Wallisの検定によりサ高住のタイプ別に比較した。
結果 944人から回答があり(回収率19.9%),そのうち欠損のあったデータを除く885人分を有効回答として分析に用いた(有効回答率18.6%)。まず不適切なケア等の実態・意識について因子分析を行った結果,「乱暴な介護の実態」「意思に沿わない介護の実態」「身体拘束の実態」と,同じ項目で構成される「乱暴な介護の意識」「意思に沿わない介護の意識」「身体拘束の意識」の3因子が抽出された。次にKruskal-Wallisの検定を行った結果,「介護タイプ」のサ高住について,「意思に沿わない介護の実態」が他のタイプに比べ有意に多く,さらに「意思に沿わない介護の意識」が有意に低いことが明らかとなった。
結論 「介護タイプ」のサ高住は,バーンアウトに陥ったり,BPSDのストレスにさらされたりしやすい環境であることから,「意思に沿わない介護の意識」が低下し,それが「意思に沿わない介護の実態」の多さにつながっていると考えられた。そのため,職員が高い意識やモチベーションを維持できるよう,職員同士が連携・協働し,支え合う仕組みの構築,例えば日常的な申し送りや定期的なミーティングのほか,困難事例の検討を行うことや,連絡ノートや情報共有システムの活用,サービス担当者会議への参加等が有効だといえる。また,「介護タイプ」以外のサ高住も含め,各サ高住の力量に見合った入居者の受け入れやマネジメントを行い,入居者の介護ニーズと各サ高住で提供できるサービスのレベルにギャップが生じないようにすることが,不十分なケアや不適切なケア等の予防にもつながるといえる。
キーワード サービス付き高齢者向け住宅,不適切なケア等の実態,不適切なケア等の意識