論文
第70巻第11号 2023年9月 妊娠期から産後の女性におけるうつ傾向の
岡﨑 あゆみ(オカザキ アユミ) 町屋 奈々美(マチヤ ナナミ) 許 明奈(キョ アキナ) |
目的 産後うつ病の防止のため,妊婦に対する現状把握が必要である。特に,女性の妊娠初期から産後にかけてうつ病のスクリーニングにより,早期介入の時期を検討する必要がある。本研究の目的は,産後うつ傾向のある女性に妊娠中から関わる示唆を得るために,妊娠期から産後の女性におけるうつ傾向の推移と各時期の差異を明らかにすることである。
方法 後ろ向き観察研究デザインを用いて,2020年10月~2022年2月にデータを収集した。研究対象者のデータは,2021年4月~2022年1月に出産した女性175名分の電子カルテから得た。調査内容は属性,妊娠初期・後期・産後2週間のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)得点とし,記述統計量を算出し,t検定を行った。
結果 138名分の有効データ(78.9%)を用いて分析した。対象者の平均年齢は33.8±4.2歳であり,初産婦が60.1%であった。EPDS得点は妊娠初期3.9±4.2点に比較して,妊娠後期2.6±3.1点(t=4.7,p<0.001),産後2週間2.9±3.4点(t=2.9,p=0.004)と,それぞれ有意に低下していた。妊娠初期にEPDSが高得点のハイリスク群は,妊娠後期と産後2週間のEPDS得点がローリスク群より高かった(p<0.05)。
結論 妊娠初期にEPDS得点が高いハイリスク群はローリスク群と比較して,妊娠後期および産後2週間もEPDS得点が高く持続していた。妊娠初期から産後うつをスクリーニングし,妊娠初期からうつ防止のために関わり,妊娠期から産後にかけて切れ目なく支援する重要性が示唆された。
キーワード 産後うつ病,妊産婦,褥婦,エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS),後ろ向き研究