論文
第70巻第11号 2023年9月 希釈タイプ乳酸菌飲料を活用した
木下 徹(キノシタ テツ) 丸山 広達(マルヤマ コウタツ) 内田 直人(ウチダ ナオト) |
目的 希釈タイプ乳酸菌飲料を継続して飲むことによる,高齢者の心身のQOL,精神健康度,幸福度の向上効果を調べ,地域単位で実施できる高齢者の心の健康を支える活動に関して検証した。
方法 愛媛県越智郡上島町岩城島の住民118名(男性37名,女性81名,56~94歳)から試験参加の同意を得た。本活動は,乳酸菌飲料を飲まない8週間の前観察期間,乳酸菌飲料を飲用する8週間の飲用期間,さらに乳酸菌飲料を飲まない8週間の後観察期間による,1群3期オープン試験として実施した。参加者は開始時から4週間ごとに健康関連QOL尺度SF-8に回答し,8週間ごとに精神健康尺度GHQ-12,VASによる幸福度アンケートおよびお腹の状態に関するアンケートに回答した。
結果 前観察期間ではいずれの指標においても有意な改善は認められなかったが,飲用期間では,SF-8の「身体機能」「日常役割機能(身体)」「体の痛み」「全体的健康感」「日常役割機能(精神)」「心の健康」「身体的サマリースコア」の各スコアにおいて有意な上昇が認められた(いずれもp<0.05)。また,GHQ-12スコアは有意に低下し(p<0.01),幸福度は有意に上昇した(p<0.01)。また,後観察期間では,SF-8の「身体機能」スコアおよび「身体的サマリー」スコアにおいて有意な低下が認められた(いずれもp<0.05)。さらに,「全体的なお腹の調子」「便秘」について,飲用期間において有意な改善が認められた(いずれもp<0.05)。
結論 希釈タイプ乳酸菌飲料を毎日飲用することによる心身への効果は,乳酸菌による保健効果から生じただけでなく,参加者に毎日のルーティンワークができたことや日々の目的ができて心が前向きになったこと等も要因となった可能性が考えられる。本活動のような取り組みは離島や農村部だけでなく都心部でも実施可能であり,高齢化が進む日本の地域高齢者の活力や幸福度の上昇への貢献が期待される。
キーワード 乳酸菌飲料,高齢者のQOL,幸福度,離島の福祉