論文
第70巻第13号 2023年11月 COVID-19の影響下で乳幼児を育児する親における
草訳 彩乃(クサワケ アヤノ) 小池 琴音(コイケ コトネ) 小森 美玖(コモリ ミク) |
目的 COVID-19による生活の変化や制限は育児中の両親に,育児ストレスや心理的な不調といった弊害を生じさせている可能性がある。本研究の目的はCOVID-19の影響下で乳幼児を育児する親における育児ストレスの関連要因を明らかにすることである。
方法 研究デザインは量的横断的記述研究であり,2022年6~7月に自記式質問紙法を実施した。対象者は乳幼児を育児中の両親であり,調査内容は,性別,年齢,就業状況,既往疾患の有無,生殖器疾患の有無,1番下の子どもの年齢,子どもの人数などであった。分析は,因子分析,信頼性分析を実施の上,育児ストレスおよび精神健康度と属性およびCOVID-19によるストレス内容との関連をt検定,一元配置分散分析,重回帰分析を用いて分析した。
結果 調査票を1,030名に配布し,有効回答565部(有効回答率54.9%)を用いてデータ分析を行った。COVID-19の影響による育児ストレスがある人は67.8%であり,原因は「自由な行動の制限」「感染防止生活が続くこと」「マスクや手指消毒」等であった。育児ストレス尺度得点は,父親群29.1点,母親群40.3点であり,母親群は有意に高く育児ストレスが多かった(p<0.001)。精神健康度得点は,父親群1.6点,母親群3.0点であり,母親群は有意に高く精神的な健康の度合いが悪かった(p<0.001)。育児ストレスに対して父親群は「家事分担の増加」(p=0.001),「習い事の遅れ」(p=0.046)が有意に育児ストレスを及ぼす影響を与えており,母親群は「行動制限」(p=0.012),「世帯収入変化」(p=0.034),「旅行できない」(p=0.001),「基礎疾患」(p=0.016)が有意に育児ストレスを及ぼす影響を与えていた。精神健康度に対して父親群は「家事分担の増加」(p=0.003),「パートナーとの時間増加」(p=0.016)が有意に精神的な健康の度合いに悪影響を与え,母親群は「行動制限」(p=0.007),「世帯収入変化」(p=0.040),「子どもの基礎疾患」(p=0.042)が有意に精神的な健康の度合いに悪影響を与えていた。
結論 育児ストレスの関連要因として,父親は「家事分担の増加」「習い事の遅れ」であり,母親は「行動制限」「世帯収入変化」「旅行できない」「基礎疾患」と違いがあった。
キーワード COVID-19,乳幼児,両親,育児ストレス