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論文記事:新型コロナウイルス感染症の療養期間延長と基礎疾患等の関連 202312-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第70巻第15号 2023年12月

新型コロナウイルス感染症の
療養期間延長と基礎疾患等の関連

-静岡県熱海保健所における第5波・第6波疫学調査表の解析-

藤浪 正子(フジナミ マサコ) 中村 美詠子(ナカムラ ミエコ)

伊藤 正仁(イトウ マサヒト) 尾島 俊之 (オジマ トシユキ)

目的 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第5波(2021年7~10月)以降は,療養解除基準期間経過後も症状悪化等により療養日数を延長した患者が散見された。静岡県熱海保健所管内は,従来から肥満や喫煙・糖尿病等の者が多く,健康課題とされてきた。そこで熱海保健所がもつCOVID-19患者の疫学調査表を用いて,療養期間延長の有無と肥満,喫煙状況や基礎疾患保有状況の関連を明らかにし,今後のCOVID-19重症化対策や生活習慣病対策推進のための知見を得ることを目的とした。

方法 静岡県熱海保健所管内で対応した第5波,第6波のCOVID-19患者の疫学調査表を用い,基準の療養期間延長の有無と患者のBody Mass Index(BMI)(㎏/㎡),喫煙状況,基礎疾患等との関連を分析した。分析は流行株の違いから第5波,第6波を分けて行い,χ2検定またはFisherの正確確率検定,ロジステック回帰分析を行った。

結果 療養期間延長ありの者は,第5波では91人(40.4%),第6波では242人(16.5%)であった。多変量調整の結果,療養期間延長の要因として挙げられた基礎疾患等の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は,第5波では肥満(BMI≧25.0㎏/㎡)2.34(1.20-4.56),第6波では,糖尿病あり2.40(1.51-3.81),やせ(BMI<18.5㎏/㎡)2.22(1.41-3.50),肥満2.08(1.50-2.88)が有意に高く,療養期間延長に影響を与えていた。一方,ワクチン接種との関連は,第5波,第6波いずれも2回以上接種で,それぞれ0.27(0.08-0.99),0.44(0.31-0.62)と有意に低く,療養期間延長の抑制要因であった。また,第6波において糖尿病とやせ,糖尿病と肥満を併存している者はそれぞれ5.18(1.20-22.40),5.68(3.01-10.70)とリスクがより高かった。

結論 COVID-19第5波においては肥満が,第6波においてはやせ,肥満,糖尿病の保有が療養期間延長の要因となり,いずれの波においてもワクチン接種が療養期間延長抑制に寄与していた。COVID-19重症化抑制のためにも,地域の従来の健康課題である肥満や糖尿病等の生活習慣病対策をより一層推進する必要がある。

キーワード 新型コロナウイルス感染症,療養期間,やせ,肥満,糖尿病,ワクチン接種

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