論文
第70巻第15号 2023年12月 介護支援専門員の貧困観の構造
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目的 介護支援専門員の貧困の原因認識の構造と,その認識が経済的に問題のある利用者・家族に対する業務にどのような影響(困難感および支援への肯定的態度)を及ぼしているのか明らかにした。原因認識は先行研究に基づき「個人的」「社会的」「運命的」の3因子構造モデルを設定した。
方法 東京都区部の居宅支援事業所に対して調査協力の依頼を行い,協力意向を示した182事業所に属する全介護支援専門員457人を調査対象者とした。調査は2021年11月に自己式調査票を用いた郵送調査で行った。因子構造の妥当性は確認的因子分析で検証した。
結果 回収された調査票は397票で,回収率は86.9%であった。分析に有効な調査票は304票であった。貧困の原因認識は3因子構造が支持され,個人的原因認識の平均が最も高かった。原因認識の中で,社会的原因認識が困難感の増加に,個人的原因認識が支援への肯定的態度の減少に有意に影響していた。
結論 原因認識と業務への影響に関しては,まず現状の枠組みでは介護支援専門員は社会的原因を解決する手段が乏しいため,社会的原因認識が対応の困難感に影響したと考えられる。貧困の原因を個人的要因だと捉えた場合は,自己責任があると考え積極的な支援姿勢がそがれている可能性がある。そして,3つ目の要因である「運命的」要因が困難感や支援への肯定的態度に影響しなかった理由および貧困が社会構造の中で引き起こされていることが指摘されているなかで,個人的原因への支持が高いことについてはさらなる検証が必要である。
キーワード ケアマネジメント,貧困帰属,ミクロ・メゾ・マクロ,困難感,肯定的態度