論文
第70巻第15号 2023年12月 中高年住民における情報通信技術(ICT)
|
目的 本研究では,情報通信技術(以下,ICT)機器による交流が,地域中高年住民の社会活動およびうつ傾向に与える影響を明らかにすることを目的とした。
方法 大阪府下2自治体の住民ボランティア927名を調査対象として,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は基本属性,所持ICT機器,所持ICT機器による交流,社会活動頻度,うつである。所持ICT機器による交流では,ICT機器による交流頻度と交流人数について把握した。社会活動頻度では,過去1年間の社会活動の頻度について把握した。うつについては,GDS5を用いて把握した。
結果 390名(42.1%)を有効回答とし,分析対象者とした。対象者の属性は,年齢は65歳未満の者が95名(24.4%),65~74歳の者が206名(52.8%),75歳以上の者が89名(22.8%)であった。性別は男性が125名(32.1%),女性が265名(67.9%)であった。所持ICT機器はフィーチャーフォンのみ群が39名(10.0%),スマートフォンのみ群が126名(32.3%),複数所持群が225名(57.7%)であった。ICT機器による交流が社会活動・うつに及ぼす影響を分析した結果,ICT機器による家族との交流頻度が高い群は低い群に比べ,うつのオッズ比が有意に低かった(オッズ比0.52,95%信頼区間=0.29-0.91,p=0.024)。ICT機器による交流人数が多い群は少ない群に比べ社会活動頻度のオッズ比が有意に高かった(オッズ比1.66,95%信頼区間=1.08-2.57,p=0.023)。また,ICT機器による交流人数が多い群は少ない群に比べ,うつのオッズ比が低い傾向がみられた(オッズ比0.58,95%信頼区間=0.33-1.00,p=0.051)。
結論 本研究では,中高年住民のICT機器による交流頻度が高いことおよびICT機器による交流人数が多いことは,うつの頻度を下げることに有効であることが示された。また,ICT機器による交流人数が多いことは,社会活動頻度を高めることが示唆された。
キーワード 情報通信技術(ICT)を利用した交流頻度,情報通信技術(ICT)を利用した交流人数,社会活動,うつ