論文
第71巻第1号 2024年1月 大学生の朝食欠食と生活行動および経済状況との関連小島 里菜(コジマ リナ) 近藤 健太(コンドウ ケンタ) 大沢 舞美(オオサワ マイミ) |
目的 朝食欠食は将来の健康に影響する食行動の1つであるが,若者の朝食欠食率は高い状態が続いている。朝食欠食を減らす政策は行われているものの,改善はされていない。本研究の目的は朝食欠食が習慣化する可能性のある大学生の生活行動や経済状況と朝食欠食の関連を明らかにすることである。
方法 研究デザインは横断研究であり,データは全国大学生活協同組合連合会が実施した「第54回学生生活実態調査,2018」を二次利用した。分析は,記述統計量を算出し,朝食の有無と基本属性,大学生の生活行動,大学生の経済状況との関連についてχ2検定およびCochran-Armitageの傾向検定を実施した。さらに朝食の有無と大学生の生活行動,大学生の経済状況との関連は,性別,所属学部,学年,住まいを調整因子とし,最近1週間の登校日数,登校時刻,片道の通学時間,深夜食の有無,深夜食の食べた内容,1日のスマートフォン使用時間合計,1週間の勉強時間合計,現在アルバイトをしているか,現在奨学金を受給しているかをそれぞれ独立変数とし,朝食の有無を従属変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。
結果 対象は18,555名(男性9,883名,女性8,672名),平均年齢は20.32±1.66歳であった。多重ロジスティック回帰分析を用いた結果,登校時刻では「9時以降」,深夜食の有無では「食べた」,深夜食の食べた内容では「常食」,現在アルバイトをしているかでは「している」,現在奨学金を受給しているかでは「受給している」の各項目で朝食欠食していると回答していた人のオッズ比が高かった。また,1週間の登校日数では,5日を基準とすると0~4日でオッズ比が高く,6,7日でオッズ比が低かった。さらに,片道の通学時間が短くなる,1日のスマートフォン使用時間合計が長くなると朝食欠食のオッズ比が高くなった。
結論 大学生の朝食欠食と生活行動および経済状況との関連を検討した結果,朝食欠食をする大学生は,登校日数が少ない,登校時刻が遅い,片道の通学時間が短い,深夜食を摂取している,深夜食の内容は常食を摂取している,1日のスマートフォン使用時間合計が長い,勉強時間が短い,アルバイトをしている,奨学金を受給しているといった特徴があることが明らかになった。大学生の朝食欠食率を下げるためには,経済状況を考慮すると同時に,スマートフォンの使用時間や,アルバイトを含む時間の使い方を見直す必要が示唆された。
キーワード 朝食,大学生,スマートフォン,アルバイト,横断研究