論文
第71巻第2号 2024年2月 日本の高等教育機関における
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目的 研究の目的は,日本の高等教育機関におけるスクールソーシャルワーカー(SSWer)養成の全国実態を明らかにすることである。
方法 調査は,一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟より「スクール(学校)ソーシャルワーク教育課程認定事業」の認定を受けている63の養成校を対象に実施した。調査票は,29の養成校から回答を得た。回収率は46%であった。調査項目として,①養成校の概要,②養成教育の概要,③実習内容の実施程度,④養成教育における難しさ,4つにまつわる項目を設定した。
結果 過去3年間の教育課程修了者数の中央値(四分位偏差,最小値-最大値)は,2019年度2(2,0-16)人,2020年度2(4,0-13)人,2021年度2(3,0-13)人であった。過去3年間の教育課程修了者のうちの新卒SSWer数では,2019年度0(0,0-3)人,2020年度0(0,0-5)人,2021年度0(0,0-4)人であった。実習生の就職可能な範囲の正規SSWerの求人の有無について,求人がある7校(24%),求人がない22校(76%)であった。実習先となる実習機関・施設の種別(複数回答)では,小学校14校(48%),中学校16校(55%),高等学校10校(34%),教育委員会22校(76%),その他11校(38%)であった。実習指導者の職種(複数回答)において,社会福祉士,精神保健福祉士の資格をもつSSWer26校(90%),元教員のSSWer8校(28%),その他3校(10%)であった。実習内容の実施程度の項目のなかで,中央値が4点の項目は,12項目中6項目,3点の項目が5項目,2点では1項目であった。養成教育における難しさは,実習先の少なさが自由記述に回答のあった23養成校のうちの9校であった。以降,実習調整の困難8校,実習内容の不十分さ7校とつづいた。実習以外の難しさでは,正規採用の少なさ8校であった。
結論 スクールソーシャルワーク(SSW)教育課程を選択する学生は少なく,新卒SSWerを輩出できていない実態が明らかとなった。また,養成教育の難しさにおいて,養成校の課題に加え,実習を受け入れる教育行政のSSWに関する認知度や正規採用の少なさなどの課題が存在した。今後,養成校と教育行政との協働により,SSW活用の重要性や養成教育を検討していく必要がある。
キーワード スクールソーシャルワーク(SSW),養成,教育課程,新卒スクールソーシャルワーカー(SSWer),全国実態