論文
第71巻第3号 2024年3月 就労系障害福祉サービスの利用決定で用いられる
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目的 就労アセスメントの制度にかかる課題を明らかにするため,本研究では就労アセスメントを用いた支給決定に携わる市区町村の課題に基づく類型化を試みることを目的とした。
方法 全国の市区町村1,741カ所の就労アセスメントの支給決定に携わる職員に対して,2022年10月14日~11月4日の期間でオンライン調査を実施した。調査票は,市区町村の人口,就労アセスメントの実施に関して認識している課題,就労アセスメントの結果を支給決定等に活用する上での対策の必要性,就労アセスメントの結果を支給決定に活用する上での対策について問う項目から構成される。回答のあった464カ所の市区町村のデータを分析に用いた。市区町村の人口分類,課題の有無,対策の必要性,具体的な対策の実施状況を変数とした階層的クラスター分析を実施した。また,各クラスターの特徴を把握するために,χ2検定を実施した。
結果 クラスター分析を実施し,解釈可能性を基準に,最終的に4クラスターが適切と判断した。次にχ2検定により得られた各クラスターにおける回答市区町村数の有意な差から,各クラスター「課題未発生(小規模)」「対策未実施」「対策実施」「課題未認識(大規模)」と命名した。
結論 本研究では,市区町村は4つの類型に分類することができた。この類型化により,就労アセスメントに関する課題が「どのようなもの」であり,この課題を改善するために「どのような改善」が想定されるかを示すことができた。就労アセスメントに関する課題として,何をどのように改善するのかの具体的なイメージを持てておらず改善が後手に回っている状況,何らかの課題が存在するが不十分な実施や形骸化も含めて手続きにおいて課題を認識していない状況が明らかになった。また,対策として,結果を利用者の進路に役立てるための多機関連携を意識した取り組みが行われている状況が明らかになった。以上より,この市区町村の類型化は,個々の市区町村の置かれている状況の違いを前提とした,様々な改善に向けたアプローチを提案する際の参考資料となると結論づけた。
キーワード 就労アセスメント,就労選択支援,就労継続支援B型事業所,多機関連携,社会参加