メニュー

論文記事:児童虐待の社会的背景に関する実証研究 202403-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

m header btn

一般財団法人 厚生労働統計協会

サイトポリシープライバシーポリシー

pmark     お問い合わせ

論文

論文

第71巻第3号 2024年3月

児童虐待の社会的背景に関する実証研究

-都道府県レベルにおけるリスク因子に着目して-

張 詩琪(チョウ シキ)

目的 本研究では都道府県レベルにおける児童虐待の社会的要因を解明し,今後の児童虐待予防対策への示唆を得ることを目的とする。

方法 都道府県別の児童虐待率,人口・世帯,経済,女性の労働,生活時間,ソーシャルサポートに関する統計データを利用し,因子分析,重回帰分析,構造方程式モデリング(SEM)を用いて分析した。

結果 因子分析の結果,「都道府県の都市化」「都道府県の性別役割分業体制」「都道府県の経済的課題」という3つの因子が抽出された。都道府県別における妻の就職率,妻の家事時間,核家族の割合,専業主婦の割合から構成された「都道府県の性別役割分業体制」が強いほど,児童虐待率が高い。都道府県における民生委員・児童委員1人当たりの相談・支援件数が多いほど,児童虐待率が低い。また,「都道府県の都市化」が進んでいるほど,「都道府県の性別役割分業体制」が強い。同時に民生委員・児童委員1人当たり相談・支援件数が少なくなり,児童虐待率が高いという間接的効果が認められた。

結論 標準的な家庭を前提とした労働,社会保障制度,性別役割分業を維持する社会構造はストレスになる可能性があり,ジェンダー平等な子育て支援,働き方改革,社会政策が求められる。つながりの希薄化と地域からの孤立の問題に関して,地域におけるソーシャルキャピタルの充実,地域の絆の再生をめぐる地域レベルの児童虐待予防対策が必要である。

キーワード 児童虐待,社会的背景,都道府県レベル,性別役割分業体制

ronbunnetshop