論文
第71巻第4号 2024年4月 特別養護老人ホームの看取りケアマネジメント
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目的 特別養護老人ホーム(以下,特養)における看取りケアへのニーズは,ますます大きくなっている。これまでの特養の看取りケア研究では,担い手としての看護職や介護職に着目されてきたが,本人の意思を中心とした多職種協働ケアが求められる中,調整機能に着目する必要がある。本研究は,特養の看取りケアの調整機能における施設ケアマネジャーの役割を明らかにすることを目的とした。
方法 全国の特養全数7,765カ所から,3,000カ所を無作為抽出して対象とした。施設長経由で,計画担当介護支援専門員1人に自記式質問紙調査を依頼し,2022年12月末に郵送で回収した。回答者の属性,所属施設の属性,看取りケアマネジメントでの役割(ケアプラン変更,不安や思いを聴く,状態を説明する,医師への連絡など6項目),入居者や家族との将来の最期の迎え方に関する対話の程度を質問した。所属機関の倫理審査承認後,調査を行った。
結果 回収数は711通(23.7%),うち回答の研究利用に同意しない20通と看取りケアプランを作成したことがない93通を除き598通を分析対象とした。回答者の基礎資格は介護福祉士86.8%,社会福祉士18.9%であった。ケアプラン作成業務を専任で担当しているのは52.2%であった。看取りケアマネジメントで「自分が主に担当」する項目は,「ケアプラン変更」が74.7%,「家族の不安や思いを聴く」は30.9%,「状態を予測して家族に説明」は18.2%,「入居者の不安や思いを聴く」は16.6%,「状態を予測して入居者に説明」は14.0%となった。今後の状態を予測して入居者や家族に説明することを自分が主に担当する人ほど入居者本人や家族との将来の対話の割合が有意に高くなっていた。
結論 特養のケアマネジャーの看取りケアマネジメントは,「ケアプラン変更」以外は他職と分担して行われることが多かった。看取りにおけるケアマネジメントは多職種協働で行われており,施設内での職種間の情報収集と共有方法の質に着目した看取りケア評価が必要と考える。
キーワード 特別養護老人ホーム,ケアマネジメント,看取りケア,人生の最期に関する事前対話