論文
第71巻第4号 2024年4月 首都圏の未就学児の母親における
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目的 日本は他国と比較して産後ケアの未普及と,産後ケア施設の利用率の低さが課題である。本研究の目的は,未就学児を育児中の母親における産後ケア施設利用の実態と要因を明らかにすることである。
方法 研究デザインは量的横断的研究であり,2022年4~9月に未就学児の母親を対象として,無記名の自己記入式質問紙調査を実施した。保育園4施設の施設長の紹介を得て調査票を配布し,留め置き法またはオンラインで回収した。調査内容は属性,産後ケア施設の利用状況,産後の身体的・精神的・経済的状況,産後の支援ニーズであり,第1子出産時の状況を想起してもらい回答を求めた。分析はSPSS ver25を使用し,t検定,χ2検定またはフィッシャーの正確確率検定,二項ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
結果 対象者150名に調査票を配布し,132部(回収率88.0%)を回収し,130名から有効回答を得た(有効回答率86.7%)。未就学児の母親における産後ケア施設の利用者の割合は14.6%であり,主な利用理由は産後の支援者欠如,休息の必要性,育児不安であった。産後ケア施設利用は,年齢(オッズ比(OR)=1.2,95%信賴区間(CI)=1.05-1.37,p=0.008),里帰りによる母の支援(OR=0.1,95%CI=0.02-0.44,p=0.003)が有意に関連していた。
結論 産後ケア施設の利用要因は,母親が高年齢であることと,産後に里帰りによる母の支援がない場合であることが明らかとなった。首都圏の母親に対する産後ケア施設の利用推奨や社会資源の情報提供といった積極的介入が必要であることが示唆された。
キーワード 未就学児,母親,産後ケア,ロジスティック回帰分析