論文
第71巻第7号 2024年7月 精神科療養病棟入院患者の
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目的 精神科療養病棟入院患者の退院には困難が伴うが,その背景には多種多様な要因が挙げられている。本研究は動機づけの観点から精神科療養病棟の入院患者の退院支援に向けた精神科リハビリテーションの介入効果を促進させるため,精神科リハビリテーションに対する動機づけと関連する要因が何かを調べることが目的である。
方法 精神科病院Aにて研究に同意した精神科療養病棟に入院している患者74名を対象として,簡易精神症状評価尺度(BPRS),精神状態短時間検査改訂日本語版(MMSE),精神科リハビリテーション行動評定尺度(REHAB),療養行動に対する動機づけ尺度(TSRQ),そして退院意欲に関するアンケートを実施した。
結果 一般化線形モデルの結果,TSRQの「自律的動機づけ」は退院意欲と負の関連,TSRQの「他律的動機づけ」と正の関連が示された。また,「他律的動機づけ」は年齢,REHABの「身支度」「施設・機関の利用」と負の関連,退院意欲と正の関連が示された。
結論 患者自身が入院治療の必要性を感じている程,精神科リハビリテーションに能動的に取り組む動機が高まると考えられる。また,生活能力の障害が重篤であることで医療者の指示による精神科リハビリテーションに従事する動機となる可能性が挙げられる。これらの結果から,自律的動機づけと他律的動機づけの観点から精神科療養病棟入院患者の退院支援のための精神科リハビリテーションのアプローチについて考察した。
キーワード 精神科慢性期医療,精神科リハビリテーション,動機づけ