論文
第71巻第11号 2024年9月 認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センターの
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目的 地域包括支援センター各職種の認知症高齢者のコーディネーションの現状を明らかにし,コーディネーション力を高めるチームアプローチの示唆を得る。
方法 全国の地域包括支援センターで認知症高齢者の相談業務に携わる保健師等,社会福祉士,主任介護支援専門員を対象に,郵送法による無記名自記式質問紙調査を行った。調査内容は,個人属性,認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センターのコーディネーション,地域ケア会議の年間参加回数,地区診断実施の有無とした。認知症高齢者のコーディネーションの得点平均値を算出し,地域ケア会議は年間参加回数中央値を境界とし,地区診断は実施割合を職種間比較した。
結果 543名に郵送し432名の回答から349名(有効回答率64.3%)を分析対象とした。属性は,運営形態は直営型17.7%,委託型82.0%,平均包括経験年数5.3年,平均当該職種経験年数9.3年,平均年齢45.7歳であった。全体の認知症のコーディネーションの得点平均値は,全項目91.2(23項目,138点満点),第1因子認知症症状が生活に及ぼす影響をアセスメントする34.5(8項目,48点満点),第2因子認知症高齢者を医療・介護・権利擁護の支援につなぐ36.1(9項目54点満点),第3因子地域の支援者に協力を得る11.1(3項目,18点満点),第4因子地域の中で認知症高齢者を支える社会資源を創出する9.4(3項目,18点満点)であった。職種間比較では,全項目(社会福祉士<主任介護支援専門員),第1因子(社会福祉士<看護師),第2因子(社会福祉士<主任介護支援専門員)に有意差(p<0.05)が認められた。
結論 各職種の認知症高齢者のコーディネーションの自己評価として,アセスメントは看護師,支援へのつなぎは主任介護支援専門員,地域支援者に協力を得るは保健師および主任介護支援専門員がよく実施していた。一方で,1職種だけで個別から地域支援までのコーディネーション達成は困難であること,地域支援者に協力を得ることや地域の中で認知症高齢者を支える社会資源の創出が全体の課題であること,包括経験年数がコーディネーションに影響することがわかった。これらから,個人任せにしないチーム体制の構築が求められ,地区診断や地域ケア会議によって,課題の共有や解決に向けた話し合いを職員間で行い,担当地区の状況に応じた事業計画の立案・実施・評価が必要である。同時に,経験年数3年未満の職員への教育体制の必要性が示唆された。
キーワード 地域包括支援センター,認知症高齢者,コーディネーション