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論文記事:若年男女のやせ・肥満と次世代の健康への影響 202409-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第71巻第11号 2024年9月

若年男女のやせ・肥満と次世代の健康への影響

-地域レベルでみた日本の人口統計学的分析-

青山 友子(アオヤマ トモコ) 扇原 淳(オオギハラ アツシ) 苑 暁藝(エン シャオイー)
菊川 真由(キクカワ マユ) 松本 麻衣(マツモト マイ) 岡田 恵美子(オカダ エミコ)
岡田 知佳(オカダ チカ) 瀧本 秀美(タキモト ヒデミ)

目的 本研究は,国内の統計情報を用いた生態学的研究を通じて,若年世代のやせと肥満の地域格差の実態を把握するとともに,妊娠前の親にあたる若年世代の体格が次世代の健康へ及ぼす影響を探るため,若年男女のやせ・肥満と早産・低出生体重児の割合との関連を検討した。

方法 2003~2007年国民健康・栄養調査協力者のうち,18~39歳で,身体計測値に欠損のない男性3,993名および女性4,465名(妊婦・授乳婦を除く)を対象に,性別および12の地域ブロック別にやせと肥満の割合を集計した。この標本の母集団に親の多くが含まれると推定される2008年に出生した児について,人口動態調査の出生に関する統計(単胎・多胎の総数)をもとに,性別・地域ブロック別に早産・低出生体重児の割合を集計した。以上の変数を地域ブロックをもとに連結し,記述統計による要約と相関分析を行った。

結果 若年世代全体では,男性ではやせ(6.3%)より肥満(24.8%)が,女性では肥満(9.9%)よりやせ(18.1%)が顕著であった。12の地域ブロック間で,やせと肥満の割合は,女性では負の相関を示したが(r=-0.83),男性では関連を認めなかった。男性では,やせの割合が最も高い南九州(9.6%)と最も低い四国(4.4%)の間に5.2ポイントの差が,肥満の割合が最も高い近畿Ⅱ(32.8%)と最も低い北陸(21.1%)の間に11.7ポイントの差がみられた。女性では,やせの割合が最も高い中国(22.0%)と最も低い四国(12.4%)の間に9.6ポイントの差が,肥満の割合が最も高い北海道(16.7%)と最も低い中国(5.5%)の間に11.2ポイントの差がみられた。児の性別を調整した重回帰分析により次世代の健康との関連を検討した結果,男性では肥満の割合が高い地域で早産(p<0.05)および低出生体重児(p<0.05)の割合が高く,女性では肥満(p<0.001)およびやせ(p<0.05)の割合が高い地域で早産の割合が高かった。

結論 本研究は若年世代のやせと肥満について,男女で異なる地域格差の実態と次世代の健康への潜在的な影響を明らかにした。適正体重を維持している若年男女の増加は,世代を超えた健康への影響を期待できる可能性があり,それには各地域のやせ・肥満の実態と性差を踏まえたアプローチが必要である。

キーワード 地域格差,やせ,肥満,早産,低出生体重児

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