論文
第71巻第12号 2024年10月 児童養護施設等入所児童の措置解除前の不安
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目的 本研究では自立を目前にした児童養護施設等入所児童が抱えている不安および退所後のつながりやサポートに関する希望を実証的に明らかにすることを目的とした。
方法 2023年1~3月の期間にて,愛知県内の児童養護施設および児童心理治療施設23カ所に措置されている15歳以上で中学既卒の入所児童157人を対象とし,本人を回答者とする無記名の質問紙調査を実施した。得られたデータを基にして,単純集計の後,2変数間の関連性を探索的に明らかにするため,退所後の不安,アフターケア希望期間のそれぞれと独立変数の関連性についてχ2検定で検討したクロス集計を提示し,考察した。
結果 調査対象全23カ所のうち,22カ所から150ケースを回収した(回収率95.5%)。不安についての集計結果からは,全体の64.0%(96人)が退所後の生活に不安を感じていることが明らかになった。退所後のサポートに関しては,全体の78.0%(117人)がアフターケアを望んでいること,さらに施設関係者とのつながりについては,全体の75.3%(113人)が退所後も継続を希望していることが確認できた。退所後の不安の程度と属性の関連性について検討したところ,女性の方が男性よりも不安が高いことが示された。施設規模2区分との検討では,「大・中・小舎」の方が「地域・小規模G」よりも「とても不安である」「どちらかといえば不安である」と評価していることが示された。さらに,アフターケア希望期間との関連性を検討したところ,「とても不安である」「どちらかといえば不安である」と感じる者ほど,アフターケアを「必要な間はずっとしてほしい」と感じていることが示された。
結論 本邦において社会的養護経験者の現状を捉え切れていない中,年長の入所児童を対象とした調査研究を行い,措置解除前の不安および退所後のつながりの維持やアフターケアを希望している現状が実証的に明らかになったことの意義は大きい。本研究の結果にかんがみてとりわけ移行期のアフターケアでは,こうした子どもの意向に沿って子ども時代に生活を共にした施設関係者とのつながりの維持を基軸にしつつ,相談・助言等のサポートが継続される安心感の中で,地域と広くつながれる仕組み創りを進めていくことの重要性を関係者と再確認したい。
キーワード 社会的養護,自立支援,リービングケア,アフターケア,社会的孤立予防