論文
第71巻第12号 2024年10月 夫婦の子供数と社会経済的特性との関連-令和2年国勢調査データの分析-奥井 佑(オクイ タスク) |
目的 直近の公的統計データをもとに夫婦の社会経済的特性と子供の有無および数との関連を調べた研究は行われていない。本研究では,国勢調査データをもとに,夫婦の子供の有無および数と学歴および雇用形態との関連を分析した。
方法 令和2年の国勢調査データを用い,夫と妻の年齢が50歳未満の夫婦について,子供の数を調査した。学歴は,中卒以下,高卒,短大・高専卒,大卒以上,在学中の5分類とし,雇用形態に関して,正社員,非正社員,自営業者,無職の4分類とした。アウトカムとして夫婦の子供数と子供の有無の2つを用いた。統計解析として,夫と妻それぞれの学歴および雇用形態ごとの子供を持つ割合および平均子供数を全体および年齢階級ごとに算出した。また,回帰モデルをもとに,夫婦の子供の有無および子供数と社会経済的特性の関連を全体および夫婦の年代別に分析した。説明変数として,夫婦の国籍,年齢,学歴,雇用形態,居住する地方を用いた。
結果 7,633,391組の夫婦を分析に用いた。学歴については,全体では男女とも大卒以上は中卒以下,高卒,短大・高専卒と比較して子供がいる人の割合や平均子供数は少なかったが,40代夫婦では学歴が低くなるほど子供を持つ割合が少なくなる傾向であった。雇用形態について,男性では年齢を問わず正社員は非正社員,無職と比較して子供を持つ割合や平均子供数が多い傾向であったが,女性では正社員は非正社員,無職と比較して子供を持つ割合や平均子供数が少なかった。他の属性を調整した回帰分析による多変量解析においても,同様の傾向を示す結果が得られた。
結論 社会経済的特性の種類や年齢階級および性別によって,既婚者における子供の有無および数と社会経済的特性との関係性が異なることがわかった。
キーワード 国勢調査,子供の数,学歴,雇用形態