論文
第71巻第12号 2024年10月 前期高齢者および後期高齢者の健診結果と
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目的 前期高齢者および後期高齢者の健診結果と死亡・要介護発生との中長期的な関連を明らかにし,効果的な対策を検討する。
方法 栃木県の市町国民健康保険の被保険者および後期高齢者医療被保険者のうち,2013年度に健診を受診し,要支援・要介護認定を受けていない65歳から89歳までの男51,317人,女61,269人を対象とし,健診受診日から2022年6月末までの自立喪失(死亡または要介護2以上)の発生について観察した。健診結果や質問票の回答内容に基づき複数の群に分け,カプラン・マイヤー法による8年自立率の算出,コックスの比例ハザードモデルによる自立喪失ハザード比の推定を行った。
結果 観察期間中の自立喪失は26,136人(死亡17,011人,要介護2以上9,125人)であった。8年自立率(%)〔95%信頼区間〕は,前期高齢者の男では血色素低値(67.2[63.1-71.0])が最も低く,前期高齢者の女ではeGFR低値(77.7[73.3-81.4])が最も低かった。後期高齢者の自立率では,男女の血清アルブミン低値がそれぞれ30.2[26.4-34.0],37.5[33.3-41.7]と最も低かった。自立喪失ハザード比〔95%信頼区間〕については,前期高齢者の男ではHbA1c8.0%以上(1.85[1.42-2.40]),血色素低値(1.66[1.39-1.99]),AST高値(1.54[1.28-1.86])等が高く,前期高齢者の女ではⅢ度高血圧(1.97[1.36-2.85]),血清アルブミン低値(1.95[1.33-2.85]),HbA1c7.5%以上8.0%未満(1.78[1.22-2.58])等が高かった。後期高齢者の男では,血清アルブミン低値(1.42[1.27-1.59]),尿蛋白+以上(1.37[1.28-1.47]),BMI20㎏/㎡未満(1.34[1.26-1.43])が高く,後期高齢者の女では,γ-GTP高値(1.64[1.34-2.02]),血清アルブミン低値(1.52[1.34-1.73]),HbA1c8.0%以上(1.42[1.09-1.84])等が高かった。BMI階層別のハザード比は,前期高齢者および後期高齢者において男女ともに20㎏/㎡未満が1.27~1.34で有意に高かった。
結論 高齢者においては,男女ともに低栄養とともに生活習慣病等も自立喪失の主なリスク因子となっていることが分かった。若年からの生活習慣病重症化予防を行うとともに,早期にフレイル対策等を中心とした保健指導に移行することにより,高齢者の健康増進のための効果的な対策が実施できると考えられる。
キーワード 国保データベース(KDB),高齢者,健診結果,フレイル対策,追跡研究