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論文記事:医療保険医療費の変動の重回帰分析を用いた要因分析 202410-06 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第71巻第12号 2024年10月

医療保険医療費の変動の重回帰分析を用いた要因分析

 

早川 敦(ハヤカワ アツシ)

目的 少子高齢化の進むわが国における社会保障給付費の主柱の1つである医療給付費に関連して,医療費の増加に関する分析は数多く行われている。その多くは,医療供給体制,疾病構造,人口構成などに着目したものとなっている。今回は,素朴に医療費の時系列データから月別の暦的変動要因と制度改正および診療報酬改定の影響を取り除くことにより,1月当たりの潜在的な医療費の増加額,いわば医療費の潜在的な増加速度がどの程度であるかを示そうとするものである。

方法 介護保険制度施行後の平成12年4月からの20年間の月別の医療保険医療費を経過月数を変数とした1次関数として捉え,これにいくつかの説明変数(ダミー変数)を与えることにより,重回帰分析の係数として月別変動の一部を取り出し,潜在的な医療費の1月当たりの増加速度(経過月数の係数)を求める。統計解析はエクセルの標準的な関数を用いて行った。

結果 医療費は,各月のパターンがはっきりしていること,月内の曜日別日数などの暦的要因のほか,種々の制度改正などにより変動していることがわかり,その影響額が統計的に有意なものとして求められた。

結論 潜在的な医療費の増加速度は1月当たり約70億円となっており,年間増加額にすると約1兆円となる。これに対して制度改正や診療報酬改定を行うことにより医療費の増加を抑え込んできていることが数量的に明らかとなった。また,潜在的な医療費は定額で増加していることから,潜在的な医療費の対前年伸び率は年々低下する構造となっている。

キーワード 医療費,時系列,重回帰分析,ダミー変数

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