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論文記事:依存症回復支援におけるソーシャルワーカー人材養成研修の効果検証 202412-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第71巻第14号 2024年12月

依存症回復支援における
ソーシャルワーカー人材養成研修の効果検証

-依存症相談研修の効果測定データに基づく定量的評価から-

堀 兼大朗(ホリ ケンタロウ) 伊達 平和(ダテ ヘイワ) 小仲 宏典(コナカ ヒロノリ)
伊東 良輔(イトウ リョウスケ) 山本 由紀(ヤマモト ユキ) 野村 裕美(ノムラ ユミ)
藤原 尚(フジワラ タカシ) 稗田 里香(ヒエダ リカ)

目的 依存症の回復支援に対するソーシャルワーカーの関わりの積極性を高める研修は重要である。しかし,その研修効果を測定した縦断的研究は乏しい。そこで本稿はアルコール依存症,薬物依存症,ギャンブル等依存症の3依存症の回復支援におけるソーシャルワーカー人材養成研修の効果について明らかにする。

方法 2022年度に実施されたソーシャルワーカー人材養成研修で収集したデータを分析に用いる。同研修ではオンデマンド動画視聴の事前研修(2023年1月10日~3月4日)と同時双方向型オンライン研修(2023年3月4~5日)が行われた。本研究では同研修の受講者に対し,オンデマンド研修の動画視聴前(1回目),動画視聴後(2回目),オンライン研修の開始前(3回目),同研修の終了後(4回目),計4回のアンケート調査を実施した。同調査ではA.客観的知識(3依存症と支援に関するクイズ),B.相談支援の知識と技量(「支援者として十分な基本的知識を有していると感じる」などの主観的評価),C.依存症支援に対する態度(依存症支援への不安,依存症問題に対する将来的な関わりの積極性),D.依存症者に対する認識(依存症の回復に対する期待,依存症を自己責任と考える態度)に回答する縦断データを収集した。分析では,Aは1回目と2回目の合計得点の変化を,B~Dは1回目と4回目の回答の変化を,Wilcoxsonの符号付き順位検定で検討した。

結果 アンケートへの回答は1回目100名,2回目98名,3回目98名,4回目92名から得られた。分析対象は4回の調査すべてに回答した87名とした。Wilcoxsonの符号付き順位検定の結果,A.客観的知識ではオンデマンド視聴前の1回目の調査よりも視聴後の2回目の調査の方がクイズの合計得点が向上した(p<0.001)。B.相談支援の知識と技量,C.依存症支援に対する態度,D.依存症者に対する認識は1回目と4回目の比較から研修を受ける前と後ですべて肯定的な変化を示した(すべてp<0.001)。

結論 研修の受講により,受講者は知識や技量の習得のみならず,支援の積極性は増し,支援の不安感の多くが解消されていた。また,依存症の回復の難しさや自己責任を強く否定できるようになっていた。今後の課題は,研修と効果測定の洗練にあり,研修内容の違いによって,さらにどのような研修効果が得られるのかを検討することにある。

キーワード ソーシャルワーカー,依存症,研修の効果測定,関わりの積極性,人材養成

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